北条加蓮「アタシ努力とか根性とかそーゆーキャラじゃないんだよね」
1- 20
20: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/12/31(日) 22:27:08.12 ID:vyCd+JK40
「杏、ちょっと手出してよ」

 とアタシは言った。

「なに? 手相でも見てくれんの?」

 杏が小さな手のひらを差し出してくる。

「そっちじゃなくて、反対、甲のほう」

「うん? はい」

 杏が手を裏返した。その指先には短く切り揃えられた、丸っこい、かわいらしい爪が並んでいた。予想通り、なんの手入れもしていない。

「ちょっと待っててね」

 アタシは部屋を出て、向かいがわにある給湯室でお湯を沸かした。それからシンクに置いてあった金だらいにお湯を注ぎ、水を足して温度を調整して、部屋に持っていった。

「なになに? なにを始める気?」

「別に変なことじゃないよ、杏にネイルしてあげよっかなって思って」

「はあ? ネイル?」

「嫌だった?」

「だって……杏このナリだよ? ネイルなんて、似合うわけないじゃん」

「魔女みたいな長い真っ赤なのだけがネイルじゃないよ。ほら、手貸して」

「……なんか怖いんだけど」

「いいから、おとなしくしなさい」

「杏のほうがお姉さんなんだけどなー」

「はいはい、お姉さん、ここに手を浸けて」

 杏はぶつぶつと文句を言いながら、お湯に手を浸した。
 3分ほどそうしてもらったあと、アタシはバッグから道具一式を取り出した。

「少し削るね」

「うん……」

 形を整えて、甘皮の処理をして、ほんの少しだけ表面を磨く。ベースコートを塗り、なんとなく杏のイメージに合いそうな薄ピンク色のマニキュアを乗せる。最後にトップコートを塗ってできあがり。

「できたよ、ほらかわいい。しばらく触っちゃダメだよ」

「……ゲームができない」

 いかにも慣れていない様子で、杏は必要以上に大きく開いた両手をにらみつけた。

「ちゃんと乾かしてからね」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
59Res/85.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice