喜多見柚「アタシにとっての奇蹟」
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36: ◆tues0FtkhQ[saga]
2017/12/25(月) 18:37:53.23 ID:WtWlSgcZ0


 Pサンが指示を出してるヒトと相談して、もう少し細かい指示をくれる。どこからどこまで歩くとか、気をつけなくちゃいけないこととか。そうやってふんふん聞いてる内に、あっという間に時間が来た。


「撮影入りまーす!」

「柚、準備できてるか?」


 あんまり緊張はしないほうだと思ってたけど、本当に緊張するようなことからは逃げてきたと思ってたけど。やっぱり、ちょっと緊張する。バトミントンの試合前のカンジに似てる。


「うん……セリフも喋ろっか? いらない?」


 ちょっぴり苦しい冗談にPサンは笑って、アタシのおでこにこつんと拳を当てる。それから、教会で唄った時と同じように、背中をぽんと叩いてくれた。そうやってアタシはととっと前に出て、くるりと振り返った。


 前に出るタイプじゃないアタシが、出ていく勇気をくれるのはきっとこのヒトなんだと思う。今はこれでいいんだよね。アタシから一歩目を踏み出していくのは、きっとまだ難しいから。今はアタシなりの精一杯を。


「柚、いっきまーす♪」


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