【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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608:名無しNIPPER[saga]
2018/05/27(日) 10:16:54.49 ID:IIOvQ4Oi0

…………………………

 まぶた越しに眩しい光が見えた。それが夕焼けの赤光だと気づき、目を開ける。

「あれ……? ぼく、寝てたのか……」

 周囲を見渡す。どうやらひかるは、ひなカフェ前の通りで座って眠っていたようだった。

 周囲には喧噪が戻り、行き交う人やテラスで談笑をする女子学生の姿も見える。

「さっきのは夢……?」

 いやに生々しい夢だった。世界から色が消え、光が消え、人が消えた、あの夢のこと。

 そして、自分自身が怪物となり暴れ回った夢。

「……そんなことより、はじめさんだ」

 席に戻る。はじめは荒い息をしているが、先ほどよりは具合がマシになったようだった。

 ふと、視界の隅、窓の外に車が止まるのが見えた。車に詳しくないひかるでも分かるくらい、見るからに高そうな高級車だ。そこから着物を身につけた上品そうな女性が降りてくるのを見て、ひかるはその女性の正体を察した。

 はじめの母親だ。

 ひかるは店を出て、その女性と目を合わせる。それだけで、女性もひかるが先ほどの電話の相手だと見抜いたようだった。

「……宅の娘がご迷惑をおかけします。はじめはどちらですか?」

「店内の席です。ご案内します」

「ええ」

 出てきた運転手を連れて、はじめが突っ伏す席まで案内する。筋骨隆々とした運転手は軽々とはじめを持ち上げると、車まで運び、後部座席に優しく乗せた。その間、はじめの母親は店員さんにも頭を下げているようだった。ひかるははじめの表情を見る。汗をかき、紅潮した顔は、辛そうだ。辛そうだが、年相応の表情だ。さすがの意地っ張りも、発熱して苦しいときにまで澄ました顔をすることはできないらしい。

「王野ひかるさん、とおっしゃいましたか」

「……はい」

 背後からの声に振り返る。はじめの母親が、何の感情も見えない顔で、ひかるを見下ろしていた。

「このたびのこと、お礼を申し上げます。後々改めてお礼に伺いますから、連絡先を教えていただけますか?」

「必要ありません。苦しんでいる人がいたら助けるのは当然のことじゃないですか」

 ひかるはその、はじめによく似た女性の言葉に、淡々と返すだけだ。

「ぼくにお礼をする余裕があるのなら、それをはじめさんに向けてあげたらどうですか」

「はじめに?」

 ひかるの言葉に、女性が眉をひそめる。ひかるの無礼な物言いに、明確な不快感を示しているのだ。



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