【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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575:名無しNIPPER[saga]
2018/05/13(日) 22:05:24.94 ID:sptbJ6v70

「あっ……その、蘭童さん」

「なんだい?」

 振り返る。あきらは、おずおずと、ためらうように言った。

「ご迷惑なのはわかっています。けど、これからも、詩を見てもらってもいいですか?」

「……なぜだい? ぼくから教えられることはもうないよ」

「そうかもしれません。でも、蘭童さんに見てもらいたいんです。それから……」

 あきらは、頬を赤く染めながら。

「……もしよかったら、蘭童さんの歌も、また聞きたいな、なんて」

「…………」

 彼は押し黙ったまま、あきらを見つめた。その心の情熱は計り知れない。なにせ、悪辣なるものすべてを燃やし尽くす、あの炎を扱いきるほどの情熱だ。

 是非もない。

 今までは気まぐれであきらに付き合っていただけだ。これ以上関わるのは彼の矜持が許さないし、何より仲間や上司に立つ瀬がない。現実問題として、朝にやるべきダイアナ学園の主事としての仕事にも関わってくる。

 しかし。

「……いいよ。毎日は難しいが、この曜日なら、毎週大丈夫だ」

「本当ですか!? わっ……す、すごく嬉しいです。ありがとうございます」

「……べつに」

 それだけ言うと、彼はその場を後にした。

 それ以上そこにいたら、どうにかなってしまいそうだったから。

(……ッ、なんだ、この気持ちは)

 彼は、愛用の剪定はさみを見つめる。それは、彼にとって、きっと大切だったものだ。

 記憶がない過去、きっと己は、このはさみを大事に、大切に、使っていたのだ。

(ぼくが何者だったかなんて関係ない。ぼくはロイヤリティのようにこのホーピッシュも破壊する。それだけだ)

 それなのに、なぜ。



(――なぜ、こんなにも、心がざわつくんだ……!)



 世界はままならない。闇が光を侵食するにつれて、光が闇を包み込む。

 希望の世界ホーピッシュにおいて、闇と光が交錯し、すべてが新たな局面へ向かおうとしていた。



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