【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
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540:名無しNIPPER[saga]
2018/05/13(日) 21:49:03.30 ID:sptbJ6v70

ファーストプリキュア!
第十七話【紡ぐ詩に想いを乗せて 復活のキュアドラゴ!】


…………………………

 ダイアナ学園は小高い丘の上に建てられている。そのためか、季節によっては、朝方にボウと霧が立ちこめることがある。特に、校舎に囲まれた中庭は、それが顕著だ。霧の中見え隠れする、英国の著名な建築家に設計してもらったのだという英国式の校舎も相まって、そこはそう、まるで霧の都と称されるロンドンのようだ。

「――って言っても、本当はただの田舎の私立中学校だけどね」

 あきらはそんな霧の立ちこめるダイアナ学園を歩きながら、独りごちた。

 とはいえ、あきらはこの景色が好きだ。一年生の頃、何の気なしに朝早くに登校して、偶然この霧がかかる景色を見つけてから、霧が出そうな朝はこうして早く登校するようになった。シーンと静まり返った中庭は、そこだけ世界から隔絶されたように思える。そこはあきらだけのヒミツのスポットだ。けれど――、

「声……?」

 何かが聞こえる。誰かの声。歌声だろうか。それは、さしかかった中庭の中から聞こえるようだ。霧の立ちこめる中庭で、その美しい歌声は、慎ましやかに小さく響き渡っていた。あきらにはその声が、誰にも聞かれないように意図的に押し殺しているように思えた。

「何だろう……」

 早朝の学校、霧が立ちこめる中、努めて目立たないように押し殺した、美しい歌声。あきらの興味を引かないわけがなかった。そっと耳を澄ましてみる。中庭に小さく響き渡るその歌声は、中庭の隅、あきらが普段、秘密の作業をする場所から聞こえてくるようだった。そこは、木々に囲まれた中に、小さな石の椅子とテーブルが置かれている場所。開放感のある中庭において異質なその空間は、あまり他の生徒が寄りつくような場所ではない。

 そっと、枝葉の隙間から中を覗く。誰かが、こちらに背を向けて立ち、小さな声で歌っている。誰だろう。もう少し見たい。その欲求に負けて、あきらは枝葉を引き、隙間を広げる。力を入れすぎただろうか。ガサッと音がして、枝葉が揺れて音が出る。しまったと思ったときには歌は止み、件の人物はこちらを振り返っていた。

 霧がかかっているその場で、そこだけが光り輝いているようだった。それほどまでに、彼は美しかったのだ。



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