【オリジナル】ファーストプリキュア!【プリキュア】
1- 20
152:名無しNIPPER[saga]
2018/01/21(日) 10:52:38.50 ID:agWmrLpM0

…………………………

「これはいったいなんの準備をしているグリ?」

 シートを敷き、パイプイスを運び、並べ、それなりにハードな準備作業をしていたゆうきとめぐみは、その言葉が耳に入って思わず飛び上がりそうなほど驚いた。

「ブレイ!?」

「グリ?」

 不思議そうに目を丸くしないでほしい。勇気の王子ことブレイが、シートの敷かれた体育館の床に、ずんぐりむっくりと立っていたのだ。そのすぐとなりにはフレンがいて、学級委員たちが働く姿を物珍しそうに眺めていた。

「ふたりとも! みんないるんだから、出てきたらダメじゃない!」

「ずっとバッグの中にいたら苦しいニコ! それに……」

 小声でブレイとフレンをしかるが、当の二人はそ知らぬ顔だ。

「……誰もブレイたちのことなんか見てないグリ」

「えっ?」

「みんな一生懸命に準備してるニコ」

 見回してみればその通りだ、作業の手を止めてブレイたちと話しているゆうきたちの方が目立っていそうなくらいだ。みんな協力し合い、あと少しで完成しそうな新入生歓迎会会場の準備に真剣に取り組んでいる。

「みんなどうしてこんなに真剣に作業をしているニコ?」

「そんなの決まってるわ。私たちだって、去年、先輩方がこうして準備してくれた会場で歓迎会をしてもらったんだから」

「わたしたちが次の新入生のために会場準備をしてあげるなんて、当たり前のことだよ」

 それは、少なくとも当たり前の想い。してもらったことを、してもらったように、次の新入生に返してあげるというだけのことだ。けれどそれを自分たちで口にし、自覚した途端、どこか気恥ずかしくも誇らしく思えてきた。こんな素敵な伝統を引き継いでいるダイアナ学園のことが、準備をしている学級委員の仲間たちのことが、そして、自分たち自身のことが、である。

「それに、ゆうきたちのことだけじゃないグリ。あの舞台の上の人たちも、すごくがんばってるグリ!」

「舞台の上って……」

 ブレイの見つめる先に目をやると、そこには演劇に打ち込むユキナら演劇部の姿がある。下で準備をしている学級委員のことを気にする様子も見せず、おそらく通し稽古だろう、遠く離れた場所にも声高々と台詞が響かせている。

 新入生歓迎会のほんの一コマ。ほんの二十分ほどの時間の演劇のために一生懸命がんばっているユキナたちの姿に、しばし見ほれてしまう。

「……あの人たちは、私たちとは少し違うわ」

「違うニコ?」

 めぐみの言葉に、フレンが首をかしげる。

「ええ。もちろん、演劇部のみんなは、新入生に楽しんでもらおうとも思っているわ。でも、それ以上に、自分たちが好きでやっている演劇をがんばりたいっていう気持ちから、あんなに熱心にやっているのだと思うわ」

「……うん。きっとそうだよ。ユキナも有紗も、演劇が大好きだから。もちろん、他の演劇部の人たちも」

 と、いつまでも呆けているわけにはいかない。ふたりボーッとしている間にも、三年生や他のクラスの学級委員はどんどん準備を進めているのだ。

「……ま、いいや。みんなの邪魔にならないようにね。それからもし見つかったら、ただのぬいぐるみのフリをするんだよ」

「ニコ!? この高貴な優しさの王女にぬいぐるみのフリをしろってこと言ってるニコ!? 失礼ニコ!」

「あら、ならバッグの中でじっとしてる?」

「ニコぉ……」

 押し黙ってしまったフレンに見送られながら、ゆうきとめぐみは学級委員の仕事に戻っていった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
647Res/1111.54 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice