49:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 13:03:17.89 ID:nZJI/gt30
鞠莉「……怖かったわ」
真姫「……」
鞠莉「真姫さんの言う通りだった。どうしようもなく、怖かった」
鞠莉「また『あの時』みたいになるんじゃないかって。またあの沈黙が襲ってくるんじゃないかって」
真姫「半年前のことは、ことりから大まかに聞いているわ」
鞠莉「ひどかったのよ。みんなが手を止めて、私たち3人を見るの。暗いはずなのに、顔だけははっきり見えるのよ」
鞠莉「声だって聞こえた。客席からあんなに距離があったのに」
鞠莉「今だって覚えてる。どうしたんだろう、かわいそう、緊張したのかな、ああ、あそこは『ダメ』だ―――」
鞠莉「何かできたはずだった。果南のパートを引き取ってもよかったし、私さえ踊りだせば、2人とも動けたかもしれなかった」
鞠莉「そうすべきだった。そうすればよかったのに」
鞠莉「私は、何もできなかった。ステージはすごく静かで、押しつぶされそうで、震えが、止まらなくて……」
真姫「……鞠莉」
鞠莉「呆れるわよね。それに今日は観客もいなかった。なのに」
真姫「……ステージ上の失敗は、高くつくわ」
真姫「普通の失敗の比じゃないの。見ず知らずの人に囲まれたところで、輝かなければいけなかったところでミスをする。理想とのギャップも大きい」
鞠莉「……」
真姫「プロのアーティストだって、それで何人も心を壊してしまう」
鞠莉「でも、乗り越えられる人だっているわ」
真姫「それは、そうね」
鞠莉「結局、私はその程度だった。弱くて、臆病で、ことりさんの衣装を着る資格も、ステージに立つ資格もなかった」
鞠莉「あの日と同じよ。私は『失格』だった」
真姫「そうね、あなたはとても臆病。すぐに震えて、強がって」
鞠莉「……」
真姫「でも、それの何がいけないの?」
鞠莉「……え?」
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