20:名無しNIPPER[saga]
2017/12/16(土) 12:38:09.65 ID:nZJI/gt30
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それからしばらくは、何も変わらなかった。
ただ、私の肌にはさらさらとしたシルクの感触が残っていた。
ことりさんの衣装を着た日の夜から、ずっと。
高校生活は「普通」だった。
私は毎日課題をこなして、学校ではクラスメイトと話したり、お茶したり。
週末は出掛けてみたり、滞在先のマンションでのんびりお菓子を頬張ってみたり。
最近起きた変わったことと言えば、いつの間にかマフラーを失くしていた、それだけだった。
「マリー、新しいマフラー似合ってるわよ!」
鞠莉「Thank you! でも、前のやつもお気に入りだったのよ」
確かあのマフラーは、果南とダイヤと一緒に買ったものだった。
似合うという言葉に舞い上がって、値段も見ずにレジに向かった私に、2人は渋い顔をしていたっけ。
2人からの手紙は一通たりとも来ていなかった。
鞠莉「別にいいわよ、来なくたって。マリーはこっちで『普通に』過ごしているんだもの」
言い訳がましく口にするたび、またあの言葉がちくちくと刺さる。
―――何のためにここまで来たの?
鞠莉「目的なんて知らないわ。私は『勉強』しに来たの」
―――留学、楽しい?
鞠莉「……果南とダイヤが行けって言うんだもの。そうでなくちゃいけないわ」
鞠莉「逃げてなんかない。留学だって、楽しいに決まってる」
ことり「ことりには、そうは見えないんだけどなぁ」
校門の前に、ことりさんが立っていた。
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