【モバマス】十年後もお互いに独身だったら結婚する約束の比奈と(元)P
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◆Z5wk4/jklI
[saga]
2017/12/26(火) 21:58:12.88 ID:kmslFcGc0
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言葉を聞いて、比奈は絡まっていた紐が解けたような気分になっていた。
結婚が現実味を帯びたころに、思わず比奈自身とプロデューサーのことだけを考え、そして周りのことを考え、躊躇した。プロデューサーと担当アイドルから、人生の伴侶に形を変えることは、プロデューサーやほかのアイドルたちとみんなで作った関係を、断ち切ってしまうものなのではないかと。
でも違った。結婚は二人だけのものではなかった。たくさんの仲間たちの中にも、比奈とプロデューサーがした不用意な約束が、もはやひとつの歴史として根付いている。その相手がプロデューサーであることに、何らの文句もない。
例えば、この約束をしたのが千枝とプロデューサーだったとして、瑞樹、沙理奈、春菜、ほかの誰かだったとして。比奈は全力で祝福しただろう。
「そうっスね」比奈は穏やかにプロデューサーを見つめた。「たまたま、アタシがプロデューサーと約束した。でも、その『たまたま』は、大事な『たまたま』になってたっス。それの相手がプロデューサーなら、……アタシも、嬉しい、っス」
さすがに、最後の言葉を発したときは、恥ずかしくてプロデューサーのことは見れなかった。
「だからさ」プロデューサーは、仕切りなおすように言う。「賭け、しよう」
「へっ」
「もし、二人とも、あの約束の日から十年経っても、独身だったら。そのときは、結婚しよう、比奈」
「は……」
言われて数秒、頭が真っ白になり、それから急に、両の頬が熱を持った。
唇が震えた。
この流れで、それをもう一度わざわざ言うということは、つまりそういうことだ。
心臓がバクバク鳴った。
「ほ、ホントっスか? ホントに、アタシなんかで、プロデューサー、じゃなかった、あの……や、ちょっとまってください」どうしていいかわからなくて、片手で額を覆う。「ちょ、ちょっと状況について行けてないっス」
比奈自身にもなんだかよくわからない言葉が口からぼろぼろこぼれた。
「あー、あー」もうわからなくなって、首を左右に振る。「すっごくよくない予感するっス。あとできっと、信じられないくらいだらしないことに……なると思うっス」
もうだらしないことにはなっている自信はあった。だからせめて、一矢報いてやりたいと思う。
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比奈は両手を身体の前で揃えて、ゆっくりと頭を下げ、それから、目じりに涙を溜めて、震える声で言う。
「あんなに女の子に囲まれて、九年間彼女の一人もいないプロデューサーっスもんね」
「九年間男っ気がなさすぎるやつに言われたくない」
笑って言い返してやると、比奈は口を尖らせた。最高に可愛いと思った。
「……帰るよ」
「……いろいろ、ありがとうっス」比奈は頭を下げて、それから恥ずかしそうに言う。「……その、今日のことは、ノーカンっていうか、……もうちょっと、アタシがちゃんとしてるときに、もう一回……一応、その、記念、っスから」
思わず吹き出すと、比奈は「なんなんスか」と腹を立てた。
そのとき、二人の携帯電話が同時に振動する。
画面を確認して、お互いに顔を見合わせて、それから二人で笑った。
携帯電話には、さっきまで呑んでいた、愛すべきプロダクションの面々の写真と、来年は呼べ、の文字が書かれていた。
これからも、ずっとずっと歩いていく。
二人だけではなく、仲間たちと、みんなで。
<おわり>
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