高垣楓「キスマーク」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/15(金) 17:55:54.97 ID:q/MTrf4E0
 晒された首元へ指を這わす。

 手のひら全体を添わせながら親指を数回撫でるように動かして、そこを汚すものを拭う。


「分かってます。私はアイドルで貴方はプロデューサー。だから、叶えられないことはある」

「貴方へ証を刻みたい。そうは言っても本当にそれをするわけにはいかない。……これ。こんなふうに、ごっこでしか叶えられない。それは分かってるんです」


 這わせていた指を離して目の前へ。

 見るとそこには指の肌色を塗り変える赤色。プロデューサーの首元へいくつも残るキスマーク、その赤色がべったりと。


「でもそれでもいい。……今日はごっこを越えるところまでしちゃいましたけど。普段はそれでもいい。いつか本当に結ばれるそのときが来るまではそれでも構わない。構わない、だから……プロデューサー」

「……」

「私のこと、愛してほしいです」

「……はい」


 ぎゅう、と。それまでよりも強く、力を込めて抱き締められる。

 抱き締められて……頭の上から、何度も言葉が降ってくる。それまでみたいな謝罪の言葉じゃない。私が欲しくて望んでた、私への想いが詰まった言葉。


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