16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:24:12.80 ID:bHIAf+4c0
「そういえばさ」
とスターが僕に言った。
「名前、なんていうの?」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:29:53.52 ID:bHIAf+4c0
「たしかにね。気にしたこともなかったな」
とサンダーが何とはなしに言った。
「そうだね、知っておきたいかも」
18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:36:05.47 ID:bHIAf+4c0
でも僕はひとつだけ、これかもしれないな、という名前を返事として言った。
三人は口をポカンと開けたかと思うと、そのままうれしいような切ないような、とにかく奇妙な表情をした。
「なんだか、イメージとだいぶ違うね」
19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:40:49.23 ID:bHIAf+4c0
「イメージと違うっていうか、イメージ不足ってカンジじゃない?」
と、同じくイエローの気配がまるでないサンダーが言った。
そうかな、と僕が言うと、サンダーとウィンドの二人がうんうんと肯いた。
20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:44:15.46 ID:bHIAf+4c0
「でも、とってもすてきな名前だと思うな。大事にしなきゃね」
とスターが奇妙な表情で僕に言った。
「そうよ、名前ってとっても大切なものなんだから」
21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:52:15.23 ID:bHIAf+4c0
それから後、彼女たちがここに戻ってくることはなかった。
まるで不思議な魔法がかけられたかのように、アトリエにはなんだか常と相容れぬ落ち着かない空気と、僕の身体が取り残された。
もしかするとあの奇妙な表情は、僕との別れのしるしだったのかもしれない。
22:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 22:57:34.79 ID:bHIAf+4c0
ふと、テーブルにのった炊飯器の上に手紙のようなものが置いてあるのに気がついた。
手に取り、折り目を開いてみると、真っ白な紙に黒いペンでこう書かれていた。
23:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:00:46.42 ID:bHIAf+4c0
*****
わたしたち三人は、
24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:05:49.68 ID:bHIAf+4c0
思えば、僕は彼女たちのことを全然知らなかった。
少女としての彼女たちを。
三人とも、年はいくつだったのだろう。
25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:11:41.79 ID:bHIAf+4c0
魔法少女だった彼女たち。
イメージカラーのあった生活。
三人の魔法少女が去ったこのアトリエは奇妙な雰囲気がいささか薄れ、淋しさの量がちょっとだけ増し、とてもとても広々としていた。
26:名無しNIPPER[sage saga]
2017/12/14(木) 23:23:04.46 ID:bHIAf+4c0
薄手の上衣を羽織り、外に出た。
道沿いの桜の蕾はまるまると膨れていて、家々の前庭に植わっている百日紅はつるりとその細身を際立たせていた。
季節の巡りの凝縮の切れ端がそこかしこに落っこちていた。
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