佐藤心「アホ毛?」小日向美穂「『ドリーミン・アーチ』ですっ」
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22:名無しNIPPER[saga sage]
2017/12/12(火) 00:25:10.56 ID:OVqY+9yEo

――――――

 さらに数日、アホ毛はその束を太くし、角度も上がり、ますます立派になっていた。

「美穂ちゃん、また髪ハネてるよ」

 友人が美穂の頭を指差す。

「あ、あはは……」

 美穂はいつものように曖昧な笑顔だけで返事する――ところが。

「ヘアピン貸そっか?」

「う、ううん、大丈夫……実は、わざとなの」

 言うはずのなかった言葉が口をついて出た。

「『しゅがーはぁと』のミニライブにバックダンサーで出るの。だから、お揃いにしてみようかなって」

「えっ、すごいね! おめでとう」

 美穂は内心焦った。

 自分がタレント養成所に通っていることは、(上京した理由でもあるので)学校でも一部の教師や友人は知っているが、具体的な話となると恥ずかしくて、はぐらかしてばかりだった。

 なのに、問わず語りに自慢じみたことをするなんて――美穂は自分で自分が信じられなかった。


 そんな経験をいくつか重ね、美穂は自分の心持ちが前向きに変化しつつあるのを感じていた。

 アホ毛に注目されたり、あまつさえ面と向かって指摘されたりしたら、結局は恥ずかしさで動転してしまうのではと心配していた。

 しかし、覚悟ができていたのだろうか、逆に気が楽だったくらいだ。

 自慢めいた軽口で受け流したりするし、うまく視線が誘導された時には、してやったりと感じる余裕まである。

 雑貨屋で聞いた通り、気の持ちようが変わったことで少し強くなれたのかもしれない。




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