青空坂上 〜卒業するまで、しゃっぽーしようね!〜
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6:中村千歳 ◆hsUAEn/JO/Q.[saga]
2017/12/04(月) 22:43:14.57 ID:LYe2U+Pd0
「ところで今度の新友会来る?」
「えっと……」
遥のコミュ力は高い。先週初めて会ったばかりの青木さんを、さっそく新友会に誘える程度には。
「私たち、中学の頃から毎週スポーツ観戦行ってるんだ。今週は日曜に野球部の試合あるから、それ行こう思ってるんだけど、もしよかったら青木さんも来ない?」
「え、えっと」
とにかく友達になりたいと思った人には徹底的に話しかけるのが遥スタンダード。俺は慣れてるけど、初めての人にはちょっときついかもしれない。
「新本郷からは出ないから大丈夫だよ!」
「……それなら」
それが決め手となったのか、青木さんが応じた。
「それじゃ、10時に第二野球場に集合!」
高校最初の新友会は、3人で行くことになった。
「ところで、第二野球場ってどこ?」
「知らないの?」
「うん……」
青木さんは新本郷の地理に弱いのか……と思ったが、実は俺も知らない。
会場の場所は、しっかり確認しないとな。というわけで、以下、地理マスター高島遥による解説。
「本郷市立第二野球場、場所は24条1丁目。私が住んでいる26条51丁目(第十六小学校前)からなら、51丁目線北行に乗って、24条51丁目(中央合同庁舎前)で24条線西行に乗り換えて、24条1丁目(地上線入口)で下車。
おおのんは24条51丁目(中央合同庁舎前)だから、24条線西行1本で行けるよ。
青木さんは1条40丁目だよね?1条線西行からの外郭線(がいかくせん)内回りで、24条1丁目(地上線入口)で降りればOK。40丁目線でも行けるけど、外郭線の方が本数多いよ」
「……」
青木さん、絶賛呆然中。
新友会は、元々遥を家の外に出すために始めた。遥にアウトドア系の趣味ができればいいと思ってたんだが、行き帰りの交通手段を色々調べていくうちに、遥が新本郷の地理にものすごく詳しくなるという副次作用があった。
対照的に俺は新本郷の地理にものすごく弱いので、自宅と学校の往復以外は、遥がいないとどこにも行けない。
「自宅と学校の往復って……」
青木さんがか細い声で聞いてくる。自宅は24条51丁目、第三高校は49丁目だから……。
「200m?」
はい。俺が遥のサポート無しで移動できる範囲は、200mです。
多摩丘陵の中央に位置する東京都本郷市。その地下に建設された新本郷地区は、片道10km四方、高さ40mの巨大地下空間である。自動車の乗り入れは禁止され、交通手段は市電のみ。自転車すら存在しない。その代わり市電は縦横無尽に走っていて、大体200〜400mくらいの間隔で電停がある。
俺が住んでいるのは、24条51丁目。北から数えて24番目の道路と、西から数えて51番目の道路が交わるところである。このあたりが新本郷の中心部で、市役所の支所なんかもある。遥は26条51丁目だから、俺の家から南へ道路2本分、つまり200mの位置である。青木さんは1条40丁目、新本郷の北の端、24条51丁目からは230m……で合ってる?
「北へ230m、西へ110m、合わせて340m。直線距離だと……200mくらい?」
√(230^2+110^2)m=√65000m≒254.95mです。遥は新本郷の地理には強いが、それ以外はそんなに強くない。むしろ俺のほうが強い。
ちなみに目的地の第二野球場は、24条1丁目、新本郷の西の端。もう距離とか言わなくていいぞ。
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