勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
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96: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/27(土) 14:54:08.89 ID:Hs0EnpZhO
花畑の中央に立った。ここからだと、町の景色がよく見える。空を仰げば、群青色の深い夜がすぐそこまで迫っていた。
目を閉じ、息を吸い込む。大地の気を全身で受け止める。こうすると、五感が普段より何倍も研ぎ澄まされるのだ。

便所掃除「ふうぅ……」

ここに、敵がいる。甲冑を着ているものの、顔は分からない。自分を馬鹿にした貴族にも、浪費ばかりする国王にも、先日対峙した少年にもなった。

便所掃除「疾ッ!」

気を放つと同時に、槍を繰り出す。空気が低くうなる。外したか。腰を低く、一歩踏み込む。斬撃が来る。縦か横か。

便所掃除「横だッ!」

頭を下げて斬撃をかわす。隙ができた。懐に飛び込み、素早く二連突き。左胸に穴を開けられた敵は、血を吐いて地に倒れ伏すーーー

勇者「やるじゃん」

少年の声に、便所掃除は動きを止めた。

勇者「綺麗だよな、この花畑。気分転換したい時、よくここに来るんだ」

便所掃除「先日は世話になった」

勇者「そんなに強いのに、どうして俺のこと突けなかったんだよ」

便所掃除「お前が死ぬ姿を想像しちまってさ……。家族も悲しむだろうし」

勇者「お前、優しいんだな。敵の家族のことまで心配できる奴、初めて見たよ」

便所掃除「優しいだと? 笑わせんな、人より臆病なだけだ。そんなことは分かってる。自分が甘いってことぐらい……」

便所掃除「だが、やっぱダメなんだ。人形は大丈夫でも実物を前にすると、色んなこと考えて尻込みしちまう」

便所掃除「あーあ……どこまでいっても、所詮は兵士気取りの貴族止まりか」

便所掃除「いや、今は貴族ですらねぇ。便所掃除っつー、誰もが嫌がる仕事に身を落とした大馬鹿野郎だ」

ぐうぅ。
便所掃除の腹が鳴った。
そういえば、朝から何も食べていない。

勇者「とりあえずメシ、行くか」

勇者は笑って便所掃除の肩を叩いた。



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