勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
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64: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/11(木) 13:39:48.53 ID:JVufzibb0
肥った男はゆらりと立ち上がると、国王と側近を見据え、胸に秘めた思いを吐き出すように捲し立てた。

先代勇者「ここまでされては、弁明の余地もありません。私は、確かに闇商人と取引を行いました。軍師が述べたことも認めます」

側近「なぜ、このようなことをした? 民の姿が見えなかったのか?」

傍で聞いていた軍師は、思わず苦笑しそうになった。
好き勝手に振る舞う貴族を野放しにしている国王も、民を苦しめる点では先代勇者と大して変わらないではないか。
茶番過ぎる。

先代勇者「……恐ろしかったのです。魔王との最終決戦。戦場となったバルフでは、多くの民が死にました。落ちてきた瓦礫に潰され、炎に焼き尽くされ、魔物に襲われて」

先代勇者「私が殺したようなものです。たとえそれが戦禍によるものだとしても」

先代勇者「寝床につくと、死んでいった民の悲鳴、怨恨、呪詛が耳に響いてくるのです。勇者だと信じていたのに、なぜ救ってくれなかったのか。なぜ助けてくれなかったのか、と」

先代勇者「何ヶ月も放蕩に耽りました。遊ぶことで私は亡霊の責め苦から逃げていたのでしょう。幸いにも、陛下から頂いた金銀財宝は掃いて捨てるほどありましたから」

側近「そして最終的には違法薬物にまで手を出した……と」

国王が首を横に振り、かすかな声でつぶやく。

国王「魔王を倒した勇者が、逃げたか。非常に残念だ。かつての英雄を殺さねばならんとはな」

下された判決は、極刑。
両手両足に縄を縛り付け、馬で四方向に牽引する八つ裂きの刑だ。バラバラになった四肢は首と共に台に載せられ、三日間バルフの大広場に晒される。
死してなお、許されることのない罪。
意外にも、先代勇者の顔は穏やかだった。


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