59: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/01/05(金) 15:45:31.84 ID:BvFy2ZQy0
手筈は整った。ガンジャはとっくに宝物庫から運び出している。
昨夜、薬師の紹介で大富豪の屋敷へ案内された。
薬師が本当は手練れの間諜であることも、耳が聞こえないのが嘘であることも、そこで知った。
それから、魔女が国家転覆のため密かに動き回っていることも。
驚いたものの、先代勇者に報告する気はなかった。
麻薬取引の現場を目撃してから、先代勇者に尽くそうという感情が綺麗さっぱり消えていたのだ。
軍師(バルフの民だけではない。国中の民が、上層部の贅沢三昧を支えるのに苦しみ喘いでいる。馬鹿げてはいないか。そう大富豪は言った。まったくだ。馬鹿げている。だが……)
軍師はちらと国王を一瞥した。軍師の視線に気づいた国王が、刺すような眼光で睨み返してくる。
国王(図に乗るでないぞ、小童。貴様ごとき鼠輩の考えることなど、余は見抜いておるのだ)
そう、釘を刺されたような気がした。逆らえば待つのは死。
この国王を相手に、叛旗を翻すのは無謀すぎる。
軍師は前を向き、手綱を握りしめた。
どれだけ強く握りしめても、震えは止まらなかった。
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