36: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2017/12/21(木) 00:44:33.07 ID:2xe7qRnY0
翌朝、薬師が白い粒の入った袋を持ってきた。
間諜「南方に呉茱萸(ごしゅゆ)という植物がありまして。それを乾燥させて磨り潰した薬です」
薬師の話によれば、側頭部の痛みは血流の乱れによるものだという。
過度のストレス、寝不足、栄養失調。その他諸々の悪条件が積み重なり血液の循環が悪くなったらしい。
ここ最近、すっかり睡眠時間がなかった。穀物の生産量や鉱山の記録を眺めていたら、いつの間に陽が高くなっていたことなど何度もある。
間諜「呉茱萸には鎮痛作用と共に、血液の循環を良くする効果もあるのです。どうぞ」
薬師は白い粒を湯の中に溶かし、差し出した。
杯を口に当て、ぐっと湯を飲み干す。
暖かい。身体が芯からポカポカしてくる。
軍師「少し気分が楽になった。これを毎日飲めばいいのだろう?」
間諜「朝、昼、晩、食後に一回づつ。一日に三回服用してくだされば、半月で治ります」
軍師「ありがたい。来月、アルマリクの王が町の視察に来るのだ。それまでに間に合いそうで良かった」
間諜「では、私はこれで失礼致します」
軍師「待ってくれ!」
背を向けた薬師に、軍師は思わず声をかけていた。
軍師「もし暇があれば、私の書斎に寄ってほしい」
話し相手が欲しかった。苦労を分かち合う仲間が欲しかった。
誰かに溜め込んだ憂いを吐き出したかった。
薬師はクスッと微笑むと
薬師「政治のことはまるで分かりませんが、私でよければ……」
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