勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
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249: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/08/18(土) 23:58:39.45 ID:yYJTY5ji0
騎士に呼ばれ、剣士は軍営の天幕に戻った。

剣士「こんにひわ」

騎士「派手に殴られたな。大きな痣、できているぞ」

騎士が右目の周りを指差しながら微笑む。
兜で表情が隠れているものの、声を聞けば笑っているのか怒っているのか分かるのだ。

剣士「本妻を怒らせた、なんてね」

騎士「冗談はそこまでにしておけ。朝一番に、良い知らせと悪い知らせが飛び込んできた。どちらから聞きたい」

剣士「もちろん、良いニュースっしょ!」

騎士「バルフで新たな勇者が誕生した。世代交代というやつだ。目的は知らんが、英雄が生まれたのは喜ばしい」

剣士「なぁんだ、つまんないのー。英雄がいたって敵がいないんじゃ、意味ないもんねー」

剣士「で、悪い知らせは?」

騎士「サマルカンドを陥とせと、王都から命令が出ている」

剣士「命令? サマルカンドって確か、エルフの住む町でしょ。不可侵条約、だいぶ前に結んだはずだけどなー」

騎士「勅命だ。陛下は外交で遠回りするよりも、手っ取り早く武力での制圧を選んだらしい」

剣士「なんかやだなぁ。どうしてそんなバカな王様のために、俺達が恨まれるような真似しなくちゃいけないんだい?」

騎士「それが、組織に所属するということだ。国家に忠誠を誓うということだ。私の家は代々、陛下の剣として傍で仕えてきた。たとえ煮え湯を飲まされようと、先祖の名に泥を塗ることだけは許されん」

剣士「縛られてるね〜息苦しそうだね〜。ザ・頭でっかち。ご先祖様も、あの世で呆れ返っておられるだろーよ」

騎士「なんだと?」

剣士「なぁ騎士。主君を見定めるのも、臣下の務めなんだぜ。暴君に仕える軍人ほど、暇なやつはいないさ」

天幕を出ると、魔剣士が立っていた。
サマルカンド征伐の話も、もちろん立ち聞きしていたのだろう。

魔剣士「剣士様」

剣士「どれが正しくてどれが間違っているかくらい、俺にだって分かる」

魔剣士「やはりあなた様は……」

剣士「さてと。魔剣士ちゃん、遊びに行こうぜ!」

剣士の手を、すげなく払いのける魔剣士。

魔剣士「イヤですわ。汚い手で触らないでくださる?」

剣士「ひどッ! 上官への態度じゃない!」

魔剣士「そのエラーイ上官が、部下を放って妓館で卑猥な遊びですか。最低な男。尊敬する価値など微塵もありませんわね」

剣士「卑猥な遊びなんてしていないでしょ〜! 許しておくれよ、明日から真面目に訓練するから〜!」

魔剣士「明日から? その腐れきった根性が嫌なのですわ! 剣士様にお弁当を作るのは、しばらく控えることにします」

剣士「ゲーッ! こんなことなら、夜こっそり行くべきだった……」

魔剣士「夜でもダメです!」

遠ざかっていく二人の後ろ姿を眺めながら、騎士は呟いた。

騎士「ハッハ、仲のよろしいことだ。見せつけてくれるね」


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