198: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:19:04.86 ID:QmyZmny70
二人は慎重に崖を降り、ハザラ族の集落へ足を踏み入れた。
ハザラ族の家は崖上から見るよりも、予想以上に大きかった。
バルフの町でよく見かけた、祆教の拝火殿に似ている。
一回の小窓から中を覗くと吹き抜けになっており、螺旋状の階段が上まで続いていた。
勇者「ごめんくださーい」
勇者の声が、塔の中で空しく響き渡る。もう一度呼びかける。
宿屋の主人「何モンだおめェら!」
振り返れば、フォークのような形の農具を構えた男。
麦を踏んでいた二頭の牛を連れ、麦畑からちょうど帰ってきたところのようだ。
勇者と魔女を空き巣か何かと勘違いしている。勇者は慌てて頭を下げた。
勇者「いきなりお邪魔してすみません。俺達、サマルカンドに用がありましてカーブルからはるばる旅してきたんです」
魔女「ボクら、世界中を旅する大道芸人でね。ドワーフ族を驚かせて、今度はエルフ族に芸を披露しようと思っているんだ」
カーブルとはバルフの南にある都市のことだ。ドワーフ族の統治下に入っており、王国の手が及んでいない。就いている職業も怪しい『冒険家』ではなく『大道芸人』とした。
宿屋の主人「なんだ、そんなことだったのか。盗賊だと思ってビックリしたぜ。武器向けちまってすまねぇな」
宿屋の主人「オラ、隊商宿やっとるんよ。この村に留まるなら、オラのところで休んでいくといい。金は取らねぇからよ」
勇者「ありがとうございます! 別に納屋でも構いませんので……」
宿屋の主人「大事なお客様を、納屋に泊めるなんて宿屋失格だろうが。三階の部屋は誰も使っていない。案内してやる」
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