196: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:09:06.13 ID:QmyZmny70
空気が熱く、乾いていた。喉がひりひり痛む。
竹筒の水はもう半分まで減っている。日照りが強く、歩くだけでも水分が汗となって流れ落ちる。
鉄門街道という険しい山道ならなおさらだ。
額にじっとり滲んだ汗を拭い、勇者は溜息を吐いた。休みたい。
どこでもいいから、日陰の下で少しの間だけ眠りたい。
勇者「魔女、ちょっと休もう」
魔女「まだまだ、陽が高いうちに進んでおかないと。夜は暗くて足場が見えない。キミを歩かせるわけにはいかないね」
勇者「そんなの、光魔法で辺りを照らせばいいじゃないか」
魔女「ダーメ! 光魔法は消費するマナが多いんだ。使い続けると身体中の生命力を使い果たして、しわしわのお婆さんになっちゃうよ」
勇者「せめて、雨が降ってくれたら最高なんだけど」
魔女「キミが望んでいるような、適度な雨は降らせられないよ。ボクの魔法、意外と加減が難しくてね。魔物を殲滅するためのものしか覚えていないんだ」
勇者「魔女の魔法、実用的なものほとんどないんだな」
魔女「みんな魔王を倒すためさ。ボクだけじゃないよ。先代勇者も戦士も僧侶も、魔物を殺す訓練しか受けていない」
魔女「所詮、ボク達は使い勝手のいい兵器だったんだよね。勇者パーティーと聞こえはいいけれど」
そう語る魔女の横顔は少し寂しげだった。
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