130: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/02/12(月) 21:28:57.83 ID:pfprEqcP0
勇者「便所掃除、指揮する時は気を付けてくれ」
聖剣を携えた勇者が、隣に立った。
勇者「生き残った兵、特に貴族兵に言えることだけど。彼らは初めての実戦に興奮してる。周りが見えていない。追撃の際も、なりふり構わず突撃するだろう」
勇者「しかし、それは蛮勇だ。褒められるべきものじゃない。命を落とす可能性も格段に増す。興奮した兵を暴走させないよう、うまく統率してほしい」
便所掃除「乱戦の中で、そこまで冷静に考えていたのか」
勇者「物見櫓の上は滅多に敵が来ない。動きを観察する時間だけは十二分にあったよ。恥ずかしい話だけどね」
便所掃除「軍師の護衛も、立派な務めだ。それに軍学と縁のない町人にしちゃ、なかなか良いところを突いている」
便所掃除は、牛の角を強く握りしめた。
歩兵を率いるのは初めてだった。
騎馬兵としての訓練のみ受けたので、歩兵の勝手が分からない。
不安は残る。
しかし、その不安を圧倒的に凌駕するほどの高揚感があった。
心臓が激しく脈打つ。
全身の血が沸き立っている。
俺は今、300人の先頭に立っている。
勇者「油断するなよ。敗残兵とはいえ、兵に変わりない」
便所掃除「俺も軍人の端くれだ。お前こそ、勇者だからって余裕ぶっこいてんじゃねぇぞ」
勇者「また生きて会えたら、青空の下で共に笑おう」
便所掃除「生きて会えたら、な」
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