13:名無しNIPPER[sage]
2017/12/05(火) 00:18:42.01 ID:SHNP282Y0
戸塚と付き合う.
たとえ夢だとしても,これほど幸福なことを見逃す手立てはない.戸塚は天使だ.
目の前の天使を,今だけは自分の思うがままに触れる.
それは,ずっとそうしたくて,できなかったこと.
八幡「戸塚…」
今や,戸塚の瞳がじんわりと濡れてきている.
なにがそんなに怖い.俺が怖いのか.俺に振られることが,そんなに怖いのか.
その気持ちは,分かる.俺だって戸塚に向けるのは,同じ気持ちだから.
頭の奥がじんじんと,熱を帯びていく.
八幡「初めて会った時から,気になっていたんだ」
八幡「あのときテニス部の件で見た,戸塚の向上心と優しさはなんというか,驚いた.こんな真面目な奴がいるのかって具合だ」
戸塚「う,うん」
スポ根は自分の趣味じゃない.くだらないものだと,自分から切り捨ててしまったものだ.
だけど戸塚を見たとき,真実,心の底では羨望と嫉妬が入りまじっていた.
へたくそでも,努力して,前に進んでいくのが眩しかった.
八幡「そんな戸塚を応援したい…っていったら傲慢だな.
ただ観客側として,戸塚が進んでいくのを見ていたい,と思う」
我ながら,頓珍漢な返事である.だけど,それが俺の答えだ.
道をあきらめた自分と,進み続ける戸塚.
暗と明,陰と陽.決して混じることがない二人.
付き合うことも,離れることもなく,延々と続けばいい.
戸塚「八幡が観客側だったら,僕から見えないよ…」
八幡「それでいいだろう,普段から観客を意識する必要なんてない.もし戸塚に相談したいことがあれば,いくらでも乗ってやる」
話しはついたと判断してむりやり踵を返すと,背中に衝撃が走った.
戸塚「僕は八幡と対等になりたい.助けられてばかりじゃ,いやなんだ.
それに僕だって,八幡を見ていたいよっ!…」
背中に当たる柔らかくて弾力があって,なにやら未知の艶めかしい感触.
そして,耳元に当たる吐息.
そこでようやく戸塚に優しく抱きしめられていることに,気づいた.
戸塚「同じ位置に立つには,ぼくは…どうすればいいの? 八幡…」
そんなの,俺が知りたいくらいだ.
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