23: ◆cgcCmk1QIM[saga]
2017/11/12(日) 20:34:52.15 ID:W1uOFZeg0
だけど、私達はもう皆、それを口に出してはならないのだと知っていました。
…舞台で踊る菜々さんを見詰めながら、私は千葉の小さなアパートで2人暮らしをしていた頃思い出しました。
事務所が潰れて路頭に迷った私を助けてくれた菜々さん。
ふたりともまだアイドルでも何でもなくて。
狭いアパートでいろんな話をして、オーディションを受けたり失敗したりしながら、明日を夢見ていました。
私たちは今はアイドルです。
あの頃の夢を叶えました。
でも、どうしてでしょう。
踊るの菜々さんを見ながら、私はあの頃がどうしてもどうしても懐かしくて。
輝いて思えてならなりませんでした。
あのころに戻れたら、きっとどんなにか楽しいでしょう。
だけど私は、望んであの場所を後にしたのです。
きっとそれも皆、同じでした。
私達は皆、望んでここまで歩いてきたのです。
だから、どんなにそうしたくても、戻ることは出来ません。
私達は皆、進んでいかなくてはならないのです。
進まなくていいじゃないか、と言ってはならないのです。
菜々さんの、最後の歌が終わりました。
私達は黙ったまま、精一杯の拍手を送りました―――
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