30:名無しNIPPER[saga]
2017/11/14(火) 18:28:43.14 ID:HxzSgDRio
プロデューサーがスーツの袖で自分の涙を拭う。
瞼は紅く腫れ、悲しげな表情も相まって痛々しいものすら感じる。
「響子」
「は、はいっ!」
涙で少しだけ濡れた瞳が私を真っ直ぐ射抜く。
あぁ、そんな目のあなたもステキ、ステキです!
「そのままでいいんだ」
真剣な言葉に思わず息が止まる。
「誰かになろうとしなくていい。響子が響子のままでいてくれればそれでいいんだよ」
「で、でも――」
「いいんだ!」
聞きたくないとばかりに私の言葉を遮られる。
「響子が響子のままで救われる人が少なくともここに一人いるから」
まるで、心臓を穿たれるような言葉でした。
――この人は私を私のままで許容してくれる。
意図しない涙が勝手に溢れては、落ちていきます。
私の貰い泣きなのか、プロデューサーもまた、瞳に涙を溜めて呟く。
「……マジでやめて……やめてね……?」
なぜだか、その呟きこそが今日聞いた言葉の中で一番重みのあるものだと感じた。
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