志希「フレちゃんからレズビアンって告白された話」
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26: ◆/lpmBFi8Qc[saga]
2017/11/07(火) 22:20:44.53 ID:B9dyB2410
「――シキちゃん?」
「へっ」
 フレちゃんの心配そうな呼びかけに、あたしは間抜けな声で返した。目の前にはあたしの顔を覗き込むフレちゃんの顔が。どうやら時間を忘れて考え込んでいたようだ。周りを見てみるとディレクターさんがスタッフさんたちに細かい指示をしているところで、あたしたちはそれを待っているらしい。タイムスリップした気分だ。
「ぼーっとしてたみたいだけど、どうしたの?」
「んにゃ、なんでもないよ〜」脱力した感じの表情で言う。
「ほんとに〜?」
「ほんとほんとー」
「そーお? サンドイッチの食べ過ぎでアシカの先祖に祟られたんじゃないかって心配しちゃった」
 ちょっと意味が分からない。
 今日のロケはお店の紹介をしながら番組スタッフが用意した謎を解き明かすというまあ劇場体験型推理ゲームに参加するみたいな内容だった。レイジー・レイジーが女優として参加する来月公開の映画の宣伝も兼ねていて、ここのところはひっきりなしにバラエティ番組に出演している。
 カメラを前についついフレちゃんの告白が脳裏をちらついてしまうが、なんとか笑顔を保ってフレちゃんと楽しく喋る。フレちゃんも控え室での時間を感じさせないいつも通りの笑顔で喋る。さあ、撮影の始まりだ。
「どーも〜! 『金曜フライデー』をご覧のみなさーんおはこんばんにちは〜! 宮本フレデリカと〜……」
「一ノ瀬志希だよ〜♪」
「今日はレイジー・レイジーの二人でお送りしまーす☆」
 前置きを終えるとあたしはフレちゃんの服の袖を握った。ここから先は台本無視だ。
「ねえ〜フレちゃんフレちゃん」
「うむ、なんだいシキちゃん」尊大な口調で応えるフレちゃん。
「あたしね、いまとっても甘いものが食べたい気分。どこかに甘い甘〜いパフェが食べられるお店、ないかなぁ?」
「あれーさっきシキちゃんサンドイッチ食べてなかった?」
「サンドイッチだけじゃ頭が働かな〜い! ここらへんで糖分補給しようよー」
「えー、でもフレちゃんはいまオムライスが食べたい気分なんだけどなぁ」
「じゃあ駅前にパフェもオムライスも食べられるお店があったから、そこ行こうよ」
「いいねー☆ 行こー行こー!」
 二人して歩き出すとディレクターさんから待ったをかけられた。ある程度の台本無視は許容範囲でもさすがに目的地の変更はダメですかぁ。仕切り直して(反省はなし)フレちゃんと雑談をしながら目的地まで歩く。
 ところで、道中の会話はほとんどすべてカメラに収めるんだけどその80%はばっさりカットされる運命にある。レイジー・レイジーの魅力はトークにあると個人的には思うんだけど、一度の撮影でたくさん撮るトークのその中身はキレッキレの鋭いものではなくほんとーにくだらない意味のない会話ばかりだから編集のときにあんまり迷うことなくばっさりカットできるんだって聞いた。まあそのまんま放送したら尺足んないだろうし視聴者としても原液のカルピス飲まされる感じなんだろうね。でもこの意味のない会話の洪水こそが面白いんだってあたしは思うんだけどなー。だからあたしたちの魅力を原液のまま飲めるのはライブに来てくれるファンだけだ。いつかのライブではあたしとフレちゃんのトークが走りすぎて時間がなくなって歌う予定だった曲が一曲潰れてめちゃくちゃ怒られて、あたしもそのときばかりはさすがに反省したけれど。そんなだからきっとあたしとフレちゃんが監督・主演の映画を作ったら意味なしトークで90%構成されたほんわかクエンティン・タランティーノとでも言うべきトンデモ映画ができるんだろうけどそれ面白そうだからスポンサーとかいないかなーいるわけないか。


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