318:名無しNIPPER[saga]
2018/01/20(土) 00:31:30.30 ID:Qhwvu5580
これは只の余談になる。
それからしばらく僕らは読書に耽り、読み終えていない本を借りて図書館を後にした。
車の中で互いに今日読んだ本の感想を語りつつ、その合間で僕はふと思った。
読書をさせてみることで気づいたが、彼女の日本語に関する語学力は同年代よりもかなり高い。
難しい言葉をすらすらと読めて、且つ漢字の読み書きは中学生と同じかそれより上のレベル。
どうしてこんなに日本語が堪能なのか。それをふと聞いてみた。
曰く、日本に連れていかれるのは自分が奴隷になった早期の段階で決まっていたと。
国外の売却先であるご主人様に迷惑かけないように、
日本語、というか学問の分野に関しては相当仕込まれたとか。
それを聞き終えた後、衝動的に僕は彼女を抱きしめた。
突然抱き着かれたサンディは僕の胸のうちであわあわと慌てふためいたが、
ひとしきり手をパタパタさせたあと、観念したように僕の背中へとおもむろに手を伸ばしてくれた。
常人では耐えきれないような、そんな辛い経験を経て覚えた日本語は嫌いなのかも知れない。
彼女のことを鑑みず、勉強が出来る理由を聞いた事に対して「ごめんね」と呟く。
すると僕の耳元でサンディは囁く。
「あの辛かった時間も、こうして貴方とお喋りするためにあったと思うと、幸せなんです」
僕はまた、ぎゅっと彼女を抱きしめた。
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