270:名無しNIPPER[saga]
2017/12/14(木) 01:11:14.05 ID:DwkAWVf50
人は沈黙を恐れる生き物だ。
しかして、僕とマスターは言葉を交わさずとも互いの心情を理解する仲だ。
彼はいま背中を向けて食器の手入れをしているようだが、
その後ろ姿の哀愁から察するに、さも人生の何某を僕に向けて語りかけているのだろう。
彼はふと磨いていたコップを置き、僕の方へ振り返る。
そしてこう告げた。
「一杯のコーヒーで三時間も粘る客に語る言葉なんてねぇよ」
どうやら今までのモノローグは口から全部出ていたようだ。
長い時間をかけて飲み干し、もはや水滴ほどしか残っていないコーヒーを無理やり啜る。
ハードボイルドは何事も冷静に。
恥ずかしさを誤魔化すことすら一流なのだ。
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