61:名無しNIPPER[sage saga]
2018/10/27(土) 23:15:45.80 ID:tpe1QzXHo
・ ・ ・
「……」
廊下を歩いていると、前方から長身の女性――美城専務が。
彼女とは、何度も衝突した。
アイドルのプロデュース方針で……何度も。
その方針の違いは今でも変わらず、しばしば、軽い口論のようにもなる。
「……」
美城専務の改革は、成功したと言えるだろう。
経営者としての彼女は、非常に優秀だ。
強引な手法を取りながらも、寛容さも持ち合わせている。
ロマンチシズムとリアリズムが、同居している方だ。
「……」
彼女のプロデュース方針は、間違っているとは言えない。
経営者としては当然の選択であるし、
多くのファンの方を得るという事に関しては、最短のルートとも言える。
利益を出す、という点に関しては、正しい。
時に、それがアイドルの方の意思を蔑ろにしてしまうのが難点だが。
「……」
だからこそ、私達が――プロデューサーがいる。
会社のために動く経営者ではなく。
アイドルの方のために動く存在として。
……会社人として間違った考え方だろうが。
「……」
それらを理解した上で、美城専務は経営に携わっている。
彼女からしたら、私が一番問題のある人間なのかも知れない。
しかし、その問題をこそ、彼女は望んでいるのでは無いかと思う節もあるのだ。
そうでなければ、今、私はこの廊下を歩いては居ないだろう。
「おはようございます」
距離が近づき、挨拶をした。
「ああ、おはよう」
専務もまた、それに返した。
すれ違いざま、チラリと私の首元に目をやったのは、身だしなみの確認か。
――クライアントに最初に会うのは、アイドルではなく君だ。
かつて言われたあの言葉に従い、注意を払うようにしている。
口元が微笑んでいた様に見えたのは、満足して頂けたからか、
それとも、彼女の態度が丸くなったと、そういう理由だからかは、わからない。
「……」
私達は平行線ではあるが、彼女から学ぶ事は、多い。
特に、その平行線を超えてくる、アイドルの方に関する事は。
だが、意識してお互いあまり話さないようにはしている。
ポエムバトルと言われるのは、私も専務も御免だからだ。
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