6: ◆gCuQ8nrQVD7k[saga]
2017/10/12(木) 23:05:29.74 ID:MeJAY4k9o
P(でも、そんなことはどうでも良かった)
P「……」
凛「プロデューサー、まだ具合悪いの?」
P(一言ありがとう、と発したっきりで呆然と立ち尽くしている俺を見て、凛がそう言葉を掛けてくる)
P「いや……久しぶりだから、喜びを噛み締めていたんだ」
凛「そっか。なら、良かった」
響子「本当に良かったです! プロデューサーが帰ってきてくれて!」
卯月「目を覚まさないって聞いた時にはどうしようかと思いましたけど……」
ちひろ「はいはい! みんな嬉しいのは分かるけど、プロデューサーさんは色々やることがあるから、これくらいでね?」
P(ちひろさんがそう言うと、皆まだ話し足りないと言う感じで渋々離れていく)
ちひろ「今いる子たちだけでこれですから……しばらくはプロデューサーさんも大変ですね」
P「……」
ちひろ「プロデューサーさん?」
P「……あ、何ですか? すみません、ボーッとしてて」
ちひろ「名残惜しいのはわかりますけど……プロデューサーさんは3日も居なかったのでしばらくは一生懸命書類仕事に向かってもらいますからね」
P「……はい」
P(名残惜しいのではなかった。そこにあったのはただの困惑と恐怖だった)
P(扉を開けた先に待っていたのは、アイドル達ではなかった)
P(……そこにいたのは、カツラと服を身に着けたマネキン達だった)
P(自立するマネキンから、内部にスピーカーを取り付けたかのようにアイドル達の声が聞こえてくる……)
P(そういう状況だった)
P(ちひろさんは、「今は笑顔で迎えてくれてますけど、今までみんな心配で泣きそうな顔だったんですよ?」と言っていた)
P(笑顔など見えなかった。俺は彼女達の目も、鼻も、口も、眉も、一切が見えていなかった。表情など分かるわけがない)
P(……向こうで談笑しているアイドル達を眺める)
P(やはり顔が、見えない)
P(着飾ったマネキンが集会を開いているようにしか見えないのだ)
ちひろ「……プロデューサーさん?」
P「……なんですか?」
ちひろ「やっぱり……実はどこか具合が悪かったり? ここに来てから、顔色が優れないみたいですけど……」
P「……いや、なんでもないです」
ちひろ「そうですか……でも何かあったら、言ってくださいね」
P「はい」
P(アイドル達の顔が、肌色の絵の具を塗りたくったみたいに見えると言ったら、ちひろさんは冗談だと笑うだろうか? それとも、気味が悪いと嘆くだろうか?)
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