4: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:15:31.55 ID:vDdOmgpL0
案の定、話は今日の訓練のおさらい的な内容だった。
互いの感想や、他の隊員の様子など、今日感じた事を語り合い、次の訓練にどう活かすかの相談。
こういう地道な行為が強豪校を強豪校たらしめているのかと思うと身が引き締まる思いだ。
今まさに、黒森峰を強くしているのだという実感が湧く。
5: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:17:18.56 ID:vDdOmgpL0
その中で、珍しく机の上に置きっ放しになっている本が目に留まった。
へえ、恋愛小説とか読むんだ。
私の視線の先に気が付いた隊長が、それは借り物でな、と気恥ずかしそうに説明した。
その瞬間、隊長が隊長としてではなく、西住まほとしての顔を覗かせたように見えた。
6: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:19:25.77 ID:vDdOmgpL0
いや、元々身近ではある。
隊長と副隊長という間柄なのだから遠くはない、はず。
だけど普段、私にとって隊長は遠いのか近いのかよくわからない存在。
物理的に近いだけという気もする。
7: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:22:04.61 ID:vDdOmgpL0
長いような、短いような沈黙があった。
それもその筈で、私の質問にはあまりにも脈絡が無かった。
どころか、そもそも私がここに居るのは訓練についての意見交換をするためであって、雑談をするためではない。
しまった、どうしよう、と思考を巡らせていると、不意に隊長が吹き出した。
8: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:23:53.25 ID:vDdOmgpL0
隊長は尚も笑いを噛み殺したような顔で、その話はカレーを食べながらするのがいいなと言って、台所に行ってしまった。
辞退できそうな雰囲気ではないので、ご馳走になる事にした。
なんだかんだで、私の疑問にも答えてくれるらしいし。
結構、ウキウキする。
9: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:26:07.97 ID:vDdOmgpL0
【まほ編】
とある雑誌のインタビューの中で、好きな食べ物を訊かれた。
私にはこれといった好きな食べ物が無かったのだが、特に無いですと答えるのが嫌で咄嗟にカレーと答えた。
10: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:28:11.32 ID:vDdOmgpL0
しかし、エリカのように毎日会う間柄であれば気が付く違和感もあるのだろう。
エリカは、私が本当にカレー好きなのか疑問を持っていたという。
黙っているつもりは無かった。
語る機会が無かっただけだ。
11: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:30:05.10 ID:vDdOmgpL0
その直前まで、机の上にあった借り物の恋愛小説について話していたというのに。
その流れを丸ごと無視して、カレーの話である。
よほど訊きたくて仕方がなかったのだと思う。
エリカは堅い。
12: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:33:07.72 ID:vDdOmgpL0
質問には答えなくてはならない。
しかし時計を見れば、長い話を始めるには遅い時間。
エリカに夕飯でも振る舞おうかと考えていると、買い置きのレトルトカレーがあった事を思い出した。
誂えたような状況に、また笑いがこみ上げた。
13: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:35:20.95 ID:vDdOmgpL0
とは言え、私はエリカの好物のアイアシェッケとやらについて何も知らない。
訊いてみたいとは思っていたが、タイミングが無かった。
エリカとは日頃、戦車道の話ばかりしている。
毎日会うから身近だとは思っているが、実際はどうなのだろう。
14: ◆nvIvS/Qwrg[saga]
2017/10/04(水) 21:37:42.81 ID:vDdOmgpL0
そう言ってエリカの方に向き直ると、妙に引き攣ったような顔をしている。
何だろう、まずい事を訊いてしまったのだろうか。
そうこうしている間に、カレーの湯煎が終わった。
カレーに載せてやろうと、遅れて鍋に放り込んだレトルトのハンバーグの湯煎ももうすぐ終わる。
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