10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/10/03(火) 23:52:04.24 ID:vJhWZrnk0
「あー終わっちゃったわね!」
「大盛況でしたね」
ぐーっと伸びをして息を吸った。十月の夜にしては温かかった。
「来年はどうなるかしら」
「終わったばかりでもうですか」
「勝負は今と未来にしかないわ! だから先々を見てかないとダメなのよ!」
「さすが元ディーラーは違います」
並んで歩く夜。停めてある車まではまだ遠い。
「あら、あなたも今は勝負師でしょ? トップアイドル諦めてなんかいないいんだから」
「そうですね。まだ上に行かないと」
今日感じた、彼女に向けられた歓声。もっと、もっと先はある。まだ上があるんだ。ずっとずっと先まで辿りつく、そう信じて。
「でも、今日はまだ終わってないんで」
内ポケットに仕舞われたコインを月夜にかざした。弱く光る月光でも、コインはいつもより輝いて見えた。
「あなたのプレゼント貰ってないものね」
「だから、打ち上げ、やりましょう。二人だけで」
親指の上にコインを乗せる。
「今日のライブに負けないくらい楽しい思い出が欲しいわね、Pさん」
「叶えてあげますよ。なんたって俺も勝負師なんでしょ? 負けれない日だってあるんです」
きぃん、と。
コインが宙を舞った。
神様がいるなら見ててくれ。
勝つためなら神頼みだってしてやれる。そんな気分さ。
両の手の平と平でそれを受け止める。
ざらりと、触り慣れたコインの模様を感じた。
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