15: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/09/30(土) 15:00:30.05 ID:r5zFZECu0
その年の十二月は、今思い返せばことさら寒かったような気がする。
都心にも何度か雪が積もったし、なによりも空気が冷ややかだった。
安物のマフラーと手袋では、誤魔化しきれないほどに。
雪でもちらつきそうな曇天の下を、僕は歩いていた。
午後八時を回っていただろうか。営業先から事務所に帰り着くまでに、身体すべてが凍えてしまうような寒さだった。
コートをすり抜けてくる冷気は、一つの容赦もなかった。
周りにいる誰もが身をかたく縮こませて足早に歩いていた。
僕もその中の一人に紛れて、心許なくひかる街灯を頼りに歩き続けた。
それはまるで無声映画の一場面のような、音と色のない行進だった。
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