八幡「雪ノ下たちが幼女になってた」
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165: ◆hfr5rHILM6
2017/10/03(火) 23:03:43.45 ID:/oXUkmlp0
 朝からの恐怖体験に身体を震わせながら、俺は普段通り登校する。

 こうして寒空の中、特に代わり映えもなく通学路に自転車を走らせていると、同級生が幼女になったという事実がまるで夢か幻かのように感じられてきた。

 しかし、靴箱を過ぎ、教室に入って、いつものようにリア充的会話を繰り広げる葉山グループに、彼女の姿が無いことを横目で確認していると、あれは確かに現実なのだという実感が湧いてくる。

 まあ実感が湧いたからと言って特に何をするわけでもなく、俺はいつも通りステルスヒッキーとして教室の風景と同化しているのだった。

「比企谷、ちょっといいか」

 全然同化出来てなかった。

 俺はイケメンフェイスから爽やかさを垂れ流しにしてらっしゃる葉山隼人さんに、精一杯の苦々しさを詰め込んだ表情で返事を返した。

「……んだよ」

「いや、結衣のことなんだけど。昨日も今日も学校に来ていないだろう? 君は何か知らないかと思ってさ」

「お前らが知らないことを俺が知るわけないだろ」

 さらりと嘘を吐く。イケメン相手ではさほど罪悪感を感じない――とは言っても、葉山グループでも由比ヶ浜の事を本気で心配している奴はいるのだろうし、そういう意味では多少は申し訳なさも感じている、のかもしれない。

 しかし葉山は、俺の返答に苦笑いという返事で応えた。なんだよそれでも絵になりやがって爆発しろ。

「……結衣は、君達を――君の事を、一番に信頼していると思うけどな」

「いや、そりゃあねぇだろ」

 彼女の心中など知るべくもないが、このリア充グループ……すなわち、行動力にも、社会的地位にも優れた集団よりも、捻くれぼっちである俺を優先させるというのは考え辛い。
 
 それに、雪ノ下とは仲が良いものの、三浦とも親友と呼んでいいくらいの仲のはずだ。まぁ三浦よりも雪ノ下を頼ることはあるとしても、三浦よりも俺を頼る、ということはないだろう。

「君は、自分に寄せられる信頼や好意に無頓着すぎるな。いや、あえて気が付かないふりをしている……か」

「……うるせぇよ」

 これそういう雰囲気を醸し出す場面じゃないからね?

 俺が鬱陶しそうに横目で睨んでいると、葉山は肩を竦めながら自分の席へと戻っていった。

 結局イケメン様は何が言いたかったのかいまいちつかめないまま、一限目の授業が始まる。

 そういえばイケメンが話しかけてきたせいで今日は戸塚とまだ会話できていない。後で思う存分話かけることにしよう。

 そんなことを考えながら、一限目の授業が終わり。事件は起こった。



 二限目の休み時間。廊下の方から聞こえて来た喧騒により、穏やかだった教室の雰囲気が変わっていくのを肌で感じた。

 有名人か何かが学校を訪れたのだろうか。どちらにしても俺には関係のない話だ、と、教室の空気と同化しながらお気に入りの文庫本を読んでいると、その喧騒がこの教室に着々と近づいてきているのを感じた。

 神様、どうか俺の平穏な学校生活だけは邪魔されませんように。そんな俺の願いは――

「……いた……ひっきぃ……」

 波乱の予感とともに、儚くも砕け散るのだった。
 


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