17: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/19(火) 00:10:38.47 ID:lKcuUgd9o
梨子「……なんで……」
私は思わず口に手を当てた。
『Aqoursの桜内梨子様へ
お久しぶりです。1年生のとき、音ノ木坂学院で同じクラスだったんだけど…覚えてるかな?
結局、あれ以来話せなくて、何があったのか気になってたんだけど桜内さん転校しちゃったから聞けず仕舞いで…。
でも最近になってAqoursとして活動してるのを聞いて、改めて桜内さんのこと調べちゃいました。
…ピアノのコンクール大変だったんだね。それでいっぱいいっぱいだったのに、いろいろちょっかいかけちゃってごめんね。
今はスクールアイドルとして頑張ってると聞いて、Aqoursへのファンレターと言う形で浦の星女学院に送らせてもらいました。
あのときは転校していなくなる最後の最後まで、苦しそうな顔でピアノを弾いていた桜内さんだけど…今はAqoursとして楽しそうに笑って活動しているのを見て安心しています。
いい友達に出会えたんだなって。
…私はうまくしてあげられなかったけど、今度はちゃんと桜内さんの気持ちを大切にしてくれる、大切な友達に出会えたんだなって。
スクールアイドル頑張ってね!応援してます。
あと、あのときは当日に言えなかったけど、今日見てくれてる日が誕生日だったらいいなっ 誕生日おめでとう!
P.S 桜内さんって笑うとあんなに可愛いんだね! 思わずAqoursの梨子ちゃんのファンになっちゃいそうだよ! なんてねっ』
梨子「……っ……」
気付いたときには涙が頬を滑り落ちていた
善子「え、ちょ、リリー!? そ、そんな泣くほど……もしかして悪口とかでも──」
千歌「善子ちゃん。大丈夫だから」
善子「え、あ、うん」
Aqoursのリーダーが皆を一言で落ち着けて、肩を震わせ背を向けたままの私に声を掛けてきた。
千歌「梨子ちゃん」
梨子「…………っ」
千歌「ちゃんと、全部繋がってるんだよ」
千歌ちゃんが私を後ろから優しく抱きしめて、そう、言った。
梨子「……うん……っ……」
私はポロポロと涙を零しながら、千歌ちゃんの言葉に頷いた。
千歌「今度は、お返事……してあげてね」
梨子「うん……っ……。うん……っ……。」
9月19日──私、桜内梨子の誕生日──あの日見つけることが出来なかった、『私の音』をきっかけにいろんなものを取り零して、後悔して、ここまで来て。
でも、その先で見つけた、本当の『私の音』──『私たちの音』が零してしまったものさえも優しく救い上げて繋いでくれた。
私はまたこれで一つ、前の自分よりももっと怖がらずに前に進むことが出来る。そう改めて胸に抱いた、そんな印象的な誕生日でした。
──これにて、ある日、ピアノと向き合うことが出来なくなった少女の話──改め、再びピアノと向き合えるようになった少女の話に、幕を引かせて頂きます。ご静聴ありがとうございました。
<終>
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