8:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:15:29.03 ID:KS3A+iW2O
どきりとする。加蓮やプロデューサーの前では普段通りの自分を演じられていると思っていたが、もしかすると想像以上に暗い雰囲気を垂れ流していたのかもしれない。
「ここ最近、なんだか奈緒、変だったから」
ポツリともらす加蓮をみて、奈緒はあぁと腑に落ちる。加蓮は何も奈緒のもやに気づいた訳では無いのだ。加蓮はずっと奈緒の目を見ていた。加蓮は他人の表情の変化にすごく敏感だ。幼少期の経験からであろうが、いつもなら気遣いとなりありがたいそれも今の奈緒には傍から見てもおかしいという事実を突きつけられているようで、とても気分が良くなかった。
胸中に押し込めたはずのもやはさらに質量を増し、あけすけな奈緒の胸から出ようともがいている。そのこと自体もそんなことに悩む自分も見せたくなくて。
「────ごめん」
耐えきれなくなった奈緒は加蓮の脇をすり抜け、事務所から出る。大きな音を立ててドアを閉めると同時、押し込めていたもやは胸を突き破り、瞬間的に奈緒の全てを支配した。そうして何を考える間もなく、気づけば奈緒は走り出していた。
何処へだなんてそんなもの全く考えずに、ただ道を足が赴くままに走り続けた。
21Res/19.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20