10:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:17:39.12 ID:KS3A+iW2O
「勝手に飛び出して、みんなに心配かけて本当に奈緒は最低だよ」
最低だ、という言葉とは裏腹に、その声には温もりがこもっていた。そして、怒りも。顔を上げると、やはりそこには彼女が居た。
「凛……」
涙で視界がぼやけているが、間違えようもない。ずっと一緒にユニット活動をしてきたのだ。
「みんな心配してるよ、事務所に戻ろう」
優しく言う凛に、さっきまでとは違う感情が堰を切ってとめどなく溢れ出す。
「うぁぁぁぁぁん!」
抑えのきかない感情に今日どれほど振り回されただろう。たった今出てきた感情は一瞬で熱い滴となり、頬を流れ落ちる。凛はほんの少し驚いた顔を見せたがすぐに微笑み、奈緒を優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫、大丈夫だから」
囁く凛の言葉に安心すると同時、事務所を出る時に見た加蓮の表情が蘇る。ああ、なんという事だ。あの驚いた表情は奈緒を心配してのものだったのだ。愚かな奈緒はようやくその事に気付き、頬を流れる滴はその勢いを増す。
こんなに優しいふたりに嫉妬し、劣等感まで抱いてあまつさえそこから来る個人的感情でふたりにも迷惑をかけてしまった。奈緒は、あたしは。
「あたしは……最低だ……!」
「そんなことは無いさ」
上から降り注いだのは、もう一つの聞きたかった声。今度は真っ直ぐ上を向ける。凛と離れ、ぐしゃぐしゃになった目元をぐいっと袖で拭って向かい合う。
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