真姫「眠い……」
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13:名無しNIPPER[saga sage]
2017/09/11(月) 03:57:09.06 ID:c3ox+YwAo
一方その頃、金比羅山では錫杖――それは良く手に馴染むものでなければならない――を片手に、首に掛けたギャマンの大数珠をカタリカタリと鳴らしつ、紅葉が深まり始めた山道を登るものが一人ある。

 金色の毛髪を額に貼り付け整った顔を歪めながらも進むのは、果たして絵里であった。たらぁりと糸を引くような粘性を持った汗は、もはや彼女の肉体が脱水症状のそれであることをはっきりと表していた。

絵里「もう少しよ……もう少しで……」

 錫杖に体重のほとんどを預けるように、覚束ない足取りで彼女は山を登りつ時折両脇へと目を光らせる。

 茂る藪の中では竹馬の友が、東條希が此方を厭らしい笑みで見詰めていた。

 真姫に過眠の呪いを与えた、妖しき者金比羅山にて姿を顕せり。希はそれだけを言い残し、薄暗いお堂の中で息絶えた。それは絵里とて理解はしている。

 嘲るような声色で名を呼ぶそれは、本物の希ではない。しかし姿を見る度に、絵里は自らの身体に活力が漲ることにも気付いていた。

 ぜひ、と上がり始めていた息を僅かに整え直し絵里はゆっくりと山頂を目指す。茂みの中からは、絶えず囀りと獣の咆哮が聞こえていた。


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