荒木比奈「なぜ私がプロデューサーを避けるのか」
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5: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/08/29(火) 23:03:26.54 ID:YMq7gyQj0
◆◇◆
「…あ゛ー」
ふらふらと痛む頭を抱えながら体を起こす。案の定汗だくになっていた。濡れた半袖のTシャツの感触が心地悪い。
体を動かすのもダルい。空腹だけど、何か食べ物を冷蔵庫まで取りに行くのもおっくうだ。まったく、かなりひどい状況になっている。先日、比奈に忠告したことを思い出すと同時に自分の事がバカらしくなる。
「…どの口が言えたことだよ」
頭を抱えた。頭が痛いからだけではない。気をつけろと偉そうに講釈垂れた張本人がこんな有様になっていることへの情けなさも、頭を抱える要因だ。
「…………はぁ」
『咳をしても一人』ではないけれど、独り言だけが虚しく口をつく。一人暮らしの弊害というか、こういうときに誰かがいないのは心寂しいし、やはり不便だ。病院行くにも、必要なものを買いに行くのも一苦労してしまう。
こういうとき、誰かがいてくれたらこの心細さも軽減されるのだろうか。そんなことを考えているときだった。
ピンポン、チャイムの音。誰か来たようだ。宅急便か?しかし、ここ最近は何かを注文した覚えなんかない。だったら実家かどこかから何かが送られてきたのだろうか。それとも、そもそも宅配なんかじゃなくて例のあの放送局か?
「あぁーい…」
うだうだと考えても仕方がないので、最低限身だしなみを整え玄関へ向かう。その間に二回目のチャイムの音が響いた。すいません、今こんな状態なんで遅れますと心の中で謝りながら鍵を開ける。
「…比奈?」
「ども。お見舞いに来たっスよ」
そこには全く想定に入れてもいなかった人間が、レジ袋を片手に立っていた。
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