未央「兄貴、何か隠してるでしょ」未央兄「なんのことだ?」
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10: ◆jduRT8bHyo
2017/08/22(火) 20:58:06.86 ID:Eo53XMUN0
「兄貴、後ろの壁に何か付いてるよ」
「……なに?」
「なんだろう、キラッて何か光って……ええっと」
「ま、待て! 立つな!」

 立ち上がってその《何か》を指し示そうとする未央を制しつつ、俺は腰を上げぬまま、ゆっくりと振り返った。
 何もない、あってはならないはずの、ベッド脇の壁。目を凝らして、未央が視線を向けていた辺りをくまなく探す。
 はたして、それは見つかった。
 そのままの態勢から手を伸ばし、爪先で引っ掻いて剥がす。
 未央が言うように、キラリと部屋の明かりを反射するそれは、セロハンテープの切れ端だった。
 切れ端というよりは、極々小さな欠片と言ったほうがいいか。

 まさか、こんなものが残っていたとは……!

 見落としていた。いや、普通は見落とすだろう。
 恐るべきは、こんな小さな欠片に気付いてしまう我が妹のめざとさだった。

「兄貴? なんだったの?」

 そして、発見者である未央からすれば、その質問をするのは当然だった。
 どう答える? どう応じるのが正解だ?

「……テープの切れ端だ。ここに貼ってあったポスターを剥がした時に、残っちまってたみたいだな」

 悩んだのは一瞬、俺は《嘘》はつかないことを選んだ。
 ただし、《本当》のことを話すつもりもない。100%が嘘では、かえってボロを出しかねないと判断した。

「へぇ、ポスター? 何のポスター貼ってたの?」
「何って、好きなバンドのだよ。おまえが考えてるようなことは一切ないから、そのにやけヅラをやめろ」

 ちょうど先ほどまであがっていた話題もポスターについてだったから、ニヤニヤと笑みを浮かべる未央が何を考えているかはすぐにわかった。
 ちぇーっとつまらなさそうに口を尖らせる未央。
 よし。これでもう、この話も終わりだろう。我ながら、うまい具合に乗り切れたのではないか?
 と、そう思った矢先。


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