22:名無しNIPPER[saga]
2017/08/23(水) 02:47:47.96 ID:+9ntdA1H0
次の日の朝
村長様の奉公人がやってきた。そばかすが残る幼さを感じるが目鼻のしっかりした子で、ポニーテールの高さから気の強い印象を受ける。
その彼女が言うには、手紙の返事をもらいに来たのだという。
幼馴染様のお誘いを了承したことを告げると、彼女は玄関の戸口を閉めながら小さくため息をついた。
「お嬢様にも困ったものです。今更、貴方様が村長様に逆らえるわけもないのに」
俺「なんのこと?」
「直接、お聞きになってください。私の口からは話せません」ピシャ
俺は、なんだか自分が思っているのと違うことを、幼馴染様が企んでいるのだと悟った。
昨夜の俺は、楽観的すぎた。
その夕刻、幼馴染み様との待ち合わせの場所へ向かった。
寺子屋の裏側は、小高い丘へとつながる階段になっている。幼馴染様は階段下で立っていた。
いつもは着物姿なのに、今日はどういうわけか袴を着ていて、懐かしい感じがした。
俺「待たせてしまいましたか」
幼馴染様「いいえ。母校を眺めていましたら、時を忘れてしまいました」
幼馴染様は、寂しげに微笑んだ。彼女は、昔からこのような女性だった。
かつて、この寺子屋に通っていたときも、彼女だけは別格だった。
容姿や勉強の出来は言うにおよばず、その大人びた性格は先生すらも驚かせた。
だけど、それなら、俺は好きにならなかった。
むしろ、入学したときのように嫌っていただろう。
俺「幼馴染様は、百年に一人の神童と呼ばれていましたね」
幼馴染様「大人はそのように持ち上げていたけれど、私はクラスで一番走るのが遅かったのです。それは、俺さんもご存じでしょう」
彼女は、不満げに口を尖らせた。
俺(当然、覚えている。幼馴染様は、寺子屋の休み時間に始まる鬼ごっこが大の苦手だった。
鬼ごっこが始まるとすぐ彼女は鬼になり、倒れるまで走っていた)
俺「田畑の仕事を手伝っておりましたから、皆、身体だけは丈夫でした」
幼馴染様「まるで、つい最近のことのようです」
幼馴染様は、寺子屋を眩しそうに眇めてみた。
現在、寺子屋の門扉は開かれていない。それでも彼女の目にはなにかが映っているに違いない。
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