38: ◆U.8lOt6xMsuG
2017/08/17(木) 21:13:45.70 ID:sFsOZJY90
背後からは「Je…?Jee…?」という聞き慣れた声がする。こいつまさか、俺が発していたかすかなベーコンレタスの匂いをかぎつけこの応接室に来たというのか?
もしそうだとしたら、俺の視界の外にいる今のこいつはアイドルでも、ましてや人間でもない。ただの飢えた獣だ。
言質を取られたら最後、どんな手段を取ろうと、俺はガチのホモにされるだろう。
それだけは避けたい。俺の貞操は俺が守る。幸い、まだ核心部分に至るまで発言はしていない。ここから発言を歪めて修正を謀る。
「ホ…ホ…干し芋が…す、好きなんだな…!!」
某裸の大将のように干し芋好きを智絵里に告白した俺。智絵里は今世紀最大級と言っても過言でないくらいのきょとん顔をする。
「…気のせいだったじぇ」
しかし、そのおかげで猛獣を退けることには成功した。俺の背後の由里子はドアを閉め、応接室から出て行った。
「プロデューサーさん?干し芋って…」
「いや違うんだ、本当に言いたいことはそれじゃなくてだな…」
もうこの部屋にモンスターは居ない。智絵里を騙せ、事務所を騙せ。作戦その九、改めて実行だ。
「本当のことを言おう…智絵里、実は俺はホ」
「やっぱりだじぇ!」
由里子はまた勢いよくドアを開け応接室に侵入する。こいつはなんでここまでかすかな匂いでやってくるんだ。血の臭いに対する海の中のサメかよ。
「干し芋ォオオオ!!!オオオオオオオ!!!オオオオオ!!!」
「プ、プロデューサーさん!?」
「干し芋ォオオオオオオォォォォオオォオォオォオォオオォオオォオ!!!!」
俺は由里子の追跡に耐えきれなくなり、智絵里を背に駆けだし、『干し芋』と叫びながら事務所中を走り回った。
午後には、ウワサを聞きつけたアイドル達が、俺にかわいそうな目を向けながら干し芋を渡してきた。
輝子には、干しシイタケを渡された。
どれも美味しかった。
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