女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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132:名無しNIPPER[saga]
2017/09/09(土) 23:10:17.16 ID:43vqk7Yd0

 ◇

 次に膝をついたのは隊長だった。
 肩で担ごうとする二番を隊長自身が止める。

「ばかが!」

 血を吐くような怒鳴り声。それでも二番はおろそうとしなかった。
 強引に隊長が二番から離れる。どさり、と人間が砂の上に倒れる。

「……これ以上近づいてみろ」

 隊長がナイフを取り出す。それを二番に向けた。

「殺してやる」

 はったりだとわかっていた。これ以上自分にかまうなと、そのためにこんなことをしていると、みんなわかっていた。きっと二番が近づいても隊長はこけおどしにナイフを振るだけだろう。それでも……。

「……わかりました」

 二番が引き下がる。何かをこらえるような表情。
 隊長がここまでして遠ざけた。へたな悪役になってまで、そんなばかみたいなことまでして。
 その意志を踏みにじるわけにはいかなかった。決してそれは、許されないことだった。

「それでいい」

 満足気にそう言う声が聞こえる。

 僕らはまた前に進む。
 人が死んでいる。
 なにもできずに、死んでいく。

「斉藤さんは俺に俺が泣いているときグミをくれたんだ、大丈夫か?って」

 二番は誰にしゃべりかけているわけでもない。卓也のほうも、僕のほうも、向いていない。

「嬉しかったんだ。些細なことだけども。でもきっと……隊長は俺のことを覚えていないんだろうな……」

 彼の言葉は誰かのためのものではなかった。何の意味もない、誰かが救われるわけではない、そういう類のものだった。

 彼がしているのは独白だ。


 ◇


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