49: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:25:30.14 ID:F1z6JHSwo
どこか遠く、向こう側から、詩織が私に手を伸ばしていました。
ああ、行かなくちゃ。
どうにかそこへ向かおうと。
50: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:25:58.30 ID:F1z6JHSwo
手を、
……
51: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:26:33.32 ID:F1z6JHSwo
触れた手には、身体には、温度が感じられなくて。
違う、と気づいてしまったのです。
52: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:27:00.07 ID:F1z6JHSwo
ぱきり、
とどこかで音がして、それっきり何もかもが崩れていきました。
53: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:27:27.49 ID:F1z6JHSwo
ーーー
54: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:27:55.13 ID:F1z6JHSwo
熱が引いて、意識がはっきりとしてきて、最初に気づいたのは。
もう、彼女がいないということでした。
55: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:28:26.92 ID:F1z6JHSwo
何も変わりませんでした。とは、言えないのでしょうけど。
日記の上ではただ一文、いなくなって淋しい、とだけ。
56: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:28:55.53 ID:F1z6JHSwo
……彼女がいなくなって、一人の日々が過ぎて、春が来て。
私の前の席に座った女の子は、私と似て読書が好きで、
57: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:29:24.62 ID:F1z6JHSwo
―――
今はもう、『しおり』を、『詩織』の事をうまく思い出すことが出来なくなってきています。
58: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:30:27.20 ID:F1z6JHSwo
本をいくつも並行して読む癖は残ってしまいました。
でも、もうそこに私の手をとめる誰かはいません。
だから、自分で作った紙の栞を挟んで。
59: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:30:56.89 ID:F1z6JHSwo
けれど、確かに『しおり』は、……『詩織』はここにいたのです。
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