80: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2017/08/10(木) 00:45:01.71 ID:c5e7bYk30
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総選挙へのエントリーが始まり、その投票期間中も、全力で選挙活動に努めた。
それが功を奏したのか、私は一次予選をトップで通過した。
ここまで来たら、名実共に、完膚なきまでの頂点を掴む。
私はそんな思いでいっぱいだった。
うん、私は。
プロデューサーは違った。
ラジオから流れる選挙の速報を聞いても、驚く素振りもなく「このあと、取材いっぱい入ってるから。よろしくな」と言った。
……ん?
取材……って、一次予選をトップで通過したことへの取材だよね。
……早くない?
ってことはプロデューサーは……知ってた?
「ねぇ、プロデューサー」
「んー?」
「一次、通過してたの知ってたでしょ」
「そりゃあ、事務所に連絡来るからなぁ」
「どうしてそれを私に言わなかったかを聞いてるんだってば」
なんでそんな大事なことを言わないの、とデスクでへらへら笑っているプロデューサーに詰め寄った。
私を見て、プロデューサーは「ヒント」と言って、モニターを指で示す。
何かの荷物の発送を通知する表示が出ていた。
「衣装。明日来るよ」
「……え」
「エントリーしたその日に、発注したんだ」
ああ、もう。
ほんとにこの人は。
もし予選に落ちていたら、衣装をどうするつもりだったんだろうか。
ううん、プロデューサーはきっと、もしもなんて考えてなかったんだろう。
誰よりも私を、私よりも私を信じてくれていたらしい。
思わず泣いてしまいそうになったけれど、ぐっと堪えて笑みを作って「ありがとう。私、本選も頑張るから」と言った。
そんな私を見て、プロデューサーは「むっとしたりにこにこしたり、凛は表情まで忙しそうだな」と笑いながら私を肘で小突く。
「もう!」と小突き返してやると、プロデューサーは「言ったでしょ? 信じてるって」ともう一度笑った。
プロデューサーは、私以上に、私の勝利を信じてた。
なら、私はそんなこの人を信じよう。
応えよう。
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