ある門番たちの日常のようです
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107: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/08/19(土) 21:19:23.70 ID:Pj/0RVMWO
ドイツ連邦共和国首相、ダイオード=リーンウッドも顔色を失った国家元首の一人だ。

以前よりアメリカのマスコミに“アイアン・マスク”なんて渾名を付けられる程度には顔のパーツを動かさないことで知られる彼女だが、ムルマンスクの一件が持ち込まれた直後は顔から血の気が文字通り失せて完全な土気色と化していた。表情は【オペラ座の怪人】が身につける仮面のように完全な無となり呼吸すらたっぷり一分ほど止まっていたため、ショック死したと勘違いし恐慌状態に陥った側近の一人が救急車を呼びかけるほどの騒ぎになった。

/*゚、。 /「────なるほど、なるほど。えぇ、それは当然助かります。私だけでなく、欧州に住まう全ての人間がその善意に感謝することでしょう」

(#゚;;-゚)「………おや」

そんな一悶着があってからまだ2時間と経っていないため、彼女を勇気づけようと入れ立てのココアを持ってきた首相秘書のデイ=ヒルトマンはやや面食らって立ち尽くすこととなった。

つい117分前まではそのまま棺桶に入れても葬儀屋が気づかずに蓋をして埋めてしまいそうなほど悲惨な状態だったが、今誰かと通話をしている彼女は幾分かの回復どころかほぼいつも通りの様子に戻っている。

たった今、創設されたてホヤホヤの機動迎撃大隊をムルマンスクに投下できるかどうかを東欧連合軍の陸軍総司令官に確認してきたばかりのデイは、どうも自分の仕事が無駄足に終わったようだと悟った。

/*゚、。 /「えぇ……えぇ……改めて感謝致します。Premierminister Minami」

ダイオードは更に一分少々の談笑の後、最後にそう言って受話器を電話機の上に戻す。

カチャリと音が鳴り、彼女はそれを合図としたかのように息をゆっくりと吐き出しながら椅子に深く腰掛けた。

/;*-、- /「ふぃ〜〜〜〜…………」

ダイオードにしては珍しく弛緩しきった顔。例えるならひいきのサッカーチームが絶体絶命のピンチに陥っていたところ、キーパーのスーパーセーブによって失点を免れた直後のサポーターのような表情だ。

聡明なデイは、その様子を眺めただけでだいたい何が起きたのかを察した。


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