63:名無しNIPPER[saga]
2017/07/21(金) 19:48:49.54 ID:+NyjqKO10
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『前略 木漏れ日の貴女へ
まずは、ごめんなさい。私が足を滑らせたから、海未ちゃん、庇ってくれたんだよね。
私のせいで海未ちゃんが目を覚まさなくて、それが受け入れられなくて……。
海未ちゃんにもらった命、3年も無駄にしちゃった。それも、ごめんなさい。
私たちは、少しずつ進めています。
にこちゃんは養成所に入ったし、希ちゃんはセクシーOL街道まっしぐら。
凛ちゃんと花陽ちゃんは教師を目指すんだって。
穂乃果ちゃんはお店で修行、真姫ちゃんも勉強漬けみたい。
絵里ちゃんと私は、海外に飛ぶことになりました。
絵里ちゃんはロシア、私はフランスだよ。
私は高校を中退しちゃったけど、そういうのを気にしない人が服飾のお仕事を教えてくれるの。
だからね、お別れなんだ。
でも、私たちはずっと一緒だよ。そう言って、海未ちゃんは栞をくれたんだもんね。
あんまりお話できないままになっちゃうけど、大丈夫。
海未ちゃんが起きたら、いっぱい話聞くからね。今は海外との連絡も簡単に取れるんだよ。
そういえば、海未ちゃんはこの書き出しだと不思議に思うかもしれないね。
海未ちゃんは私のこと、木漏れ日みたいって言ってくれたけど、私は少し違うと思うなあ。
だって、木漏れ日は太陽と、木があってはじめてできるんだもんね。
私にとって太陽は穂乃果ちゃん。そして木は、海未ちゃんだよ。海なのに木だなんて、変な感じだね。
でもね、海未ちゃんはとっても頼りになるところもあって、それなのに柔らかいところもあって、本当に木みたい。
木はね、季節によって、葉っぱやお花でおめかしするんだよ。
私も海未ちゃんに似合う服をつくって、着てもらいたいな。
だからこの手紙は、海未ちゃん宛てだけど、穂乃果ちゃん宛てでもあるんだ。
読み終わったら、ちゃんと穂乃果ちゃんにも見せてあげてね。
海未ちゃんは「それじゃあ、ことりはどうなんですか」って言うかもしれないね。
私はね、穂乃果ちゃんと、海未ちゃんと、2人がつくる景色の中を飛ぶ、小鳥なんだ。
自分で言うの、ちょっと恥ずかしいね。
それでね、飛ぶのに疲れたら、木の枝にとまって、お日様の光の中で眠っちゃうの。
だから、また会えるよ。
8月 31日
南ことり』
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