【デレマス】あやめ「バックストリート・ニンジャ・パフォーマンス」
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12:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:31:08.12 ID:0Mcrdfm2o
 最早男が自由に動き回れる空間は畳三枚分かそれ以下か。彼の持つ常人の三倍の脚力であれば問題なくここを抜け出せるだろうが……彼は上空を見上げた。粘り着くような雨が湿気とともに彼の顔を濡らす。そして彼は見た。屋上からこちらを見下ろす影を。


13:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:31:39.01 ID:0Mcrdfm2o
「どうも、記者さん。困りますよー、社内にいらっしゃるときは来客用のネームプレートを下げてもらわないと」


14:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:32:08.76 ID:0Mcrdfm2o
 その声は明らかに若い、そして高い。少女だ。男が一度瞬きをした。少女は男の目の前にいた。(早いな)男は瞬時に何百通りもの戦闘シミュレーションを行い、その内『隙を見て逃げる』パターンを捨てた。相手から視線を離さないまま、視界の隅でスマートフォンの画面を確かめる。圏外。(ジャマーは設置済み……当たり前か)


15:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:32:36.16 ID:0Mcrdfm2o
 男は声には出さず悪態をつく。(クソファッキンクライアントめ。何が『フェイス・トゥ・フェイスでの生データの受け渡しが条件』だ。時代遅れのセンチメンタリスト! 転落した少女アイドル好きの変態ジジイ! よりにもよって“あの”プロダクションに目をつけやがって!! ファックファックファック!!)


16:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:33:36.31 ID:0Mcrdfm2o
 雨脚が強まる。男は鞄を壁際に置き、自己紹介をした。ビジネスの基本である。「どうも。ペンネーム『悪徳』。所属は無し」「どうも悪徳さん。私は『あやめ』です。所属は346プロダクション」「ふん、どうせ情報部の奴らだろ。“美城の草”、有名だぜ」「お褒めに預かり……」「皮肉だ。目的は」「データ。目的は」「そのデータ持ってとんずら」


17:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:34:21.27 ID:0Mcrdfm2o
「では」あやめが構える。空気がピンと張り詰め、互いの時間認識が脳内伝達物質の加速によって鈍化し始める。悪徳は改めて彼女の姿を観察した。この状況を作り出した時点で小娘などと侮る気はさらさら無い。だが、あやめの服装はまるで冗談めいていた。


18:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:34:59.51 ID:0Mcrdfm2o
 ニンジャ装束である。黒髪を一つに括り後ろに長く伸ばし、身につけたる装束も墨を落としたかのような暗黒。だが、それは本格的に闇に溶け込むためのものではない。胸元は大きく開き、至る所に肌を露出する切れ込みも見られる。そう、扇情的に過ぎる。


19:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:36:00.54 ID:0Mcrdfm2o
 悪徳は目を見開いた。彼は飛び道具等の武装を見抜くつもりだった。だが実際に彼が見ていたのは、いや、魅入られていたのは彼女の蠱惑的存在感! ビジュアルレッスンの賜物! つまり、彼女は!


20:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:36:34.90 ID:0Mcrdfm2o
「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャの……アイドル!!


21:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:37:13.54 ID:0Mcrdfm2o
 強烈なボディへの一撃! 肺から空気が一気に絞り出される! 一瞬、視界が白く染まりかけるが奥歯を噛み締め、耐える! 二撃目! 顔面への左ストレート! 悪徳は必死に体勢を整え内側からあやめの腕を弾き、捌く。しかしあやめは弾かれた動きにあえて逆らわず、その勢いをもって後ろ回し蹴りを繰り出した。悪徳は右肘を立ててこれをガードする。


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