54:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 21:43:36.42 ID:+eTeNEs7O
「マジかよ! スゲェ! アイドルじゃねえか!」
「やりやがったな、あいつ!」
「俺はやると思ってたよ、うん」
「は? いや俺も思ってたから」
むさ苦しいプレハブ小屋の中、一冊の雑誌を取り囲んで湧いた。
彼女の笑顔はここで見ていたものと何ら変わらないように……ともすれば、さらに輝きを増しているようにも見えた。
小さな寂しさが、棘になって胸をチクリと刺す。
約束は、ひとまず守られているようだ。もちろんこれから先も、まだまだ見守っていかなくてはならないが。
ふと彼女の記事の横のページに目をやると、そちらは既にデビュー済みアイドルの、ライブイベントの特集記事だった。
首をかしげる。
……観客が持っている、この交通誘導灯のようなものは、一体なんだ。
詳しそうな同僚に聞いてみた。
「え? ああ、それはサイリウムってーんスよ。そのアイドルのイメージカラーで光る棒を振るのが……なんだ、決まりなんス」
なるほど。
じゃあ彼女のライブのときはこれを持っていけばいいのか、とそばにあった赤色灯を見せた。
「いやいや、普通にちゃんとしたの買うべきだろ。そもそもあいつのイメージカラー、赤かわかんねえし……」
「あ、ここに書いてんじゃね。あいつのプロフ載ってるぞ。えっと……」
『名前』『出身』
『年齢』『生年月日』
『所属』
その並びに、
『イメージカラー:茶色』
そう、書かれていた。誰からともなく吹き出した。
室内に笑い声が響く。
らしいといえば、らしいのかもしれないが。
仮にもシンデレラ、アイドルのイメージカラーが、茶色ってのはどうなんだ?
「……なあ、藤本よ?」
おしまい。
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