49:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:40:09.26 ID:+eTeNEs7O
一歩踏み出して、華奢で、たくましくて、驚くぐらいに強かった彼女の頭を抱えた。
忘れるわけがないだろう。馬鹿。
泣くな。謝るな。応援するに決まっているだろう、自分たちはもう、他ならぬお前のファンなんだから。
澄んだ青色の端がごく小さく滲む。
見上げた空には雲がまばらに浮いていた。けれど、夏の強烈な日差しを遮るものはなかった。
「……親方ぁ…………」
そんな情けのないぐずった声が小さく下から聞こえてきた。胸元には湿っていく感覚があった。
少しの時間を待って、彼女が落ち着いてから手を離した。一歩下がって、境界線の此方へ。
酷い顔だ、と笑ってやった。
「……うっさいし……」
笑っててくれ。ずっと、いつまでも。
拗ねたように言う彼女に、そう頼んだ。
「……そうだぞ。お前が笑ってないと、親方が人殺しになっちまうからな」
「それはマズイな。飯食いっぱぐれる」
茶化すような声が後ろから飛んできた。
彼女の充血した目が丸くなる。
「……へ?」
「ああ、しかも被害者はプロデューサー野郎だぞ」
「真夜中の凶行! 埋立地に沈む青年!」
「いつかやると思ってましたね、ええ」
「同僚は語る」
「……えっ、なになに、どゆこと?」
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