【モバマス】サンタさんと他愛ない日々を
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42:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 23:31:33.54 ID:NlBQtPKPo
外に逃げ出す訳でもないようだから、逃げる場所など元々ない。
イヴは物置に使っている一室に飛び込み、そのまま扉を閉めるなり鍵をかけた。
俺は、鍵の掛けられた扉の前で荒い息を吐く。

自然と、木製の扉越しに言葉を交わすことになる。

「もうちょっとしっかりしたシチュエーションがいいんですぅ!」
「わかった、わかったから!」
「どうせなら、情熱的なのがいいです」

柄じゃないのが分かりきっていたものだから、若干げんなりする。

「……きちんと、追いかけてくださいね」
「はいはい」
「本当に聞いてます?」
「聞いてる聞いてる」
「もぅ〜」

扉越しに聞こえる声は不満そうで少し笑える。

「……えへへ、楽しみですね」

元々、こちらに届けるつもりもなかったのだろう。
囁くような透明な感情を乗せた声が僅かに漏れ聞こえてくる。
扉に背を預けて、瞼を閉じる。

なんとなく、右腕を持ち上げてみると、ボタンという留め具を失った袖が捲れ上がった。
ふと、ここにあったボタンが今はヤツの胃袋に収まっているのかと考えてしまう。

「ホント、意味がわからん」

絶対にこんなの、お馬鹿だ。しかも、ひどく疲れる。
だというのに。

「あー。楽しい」

俺は一歩、一歩と踏み出していく。

「めしー、めしの時間じゃー」

俺がそう言った少し後に背後で鍵が外され、扉の開く音がする。
そして、気の抜けるような声が聞こえる。

「おー!」



願わくば。
願わくば、この少し間の抜けたサンタさんとの他愛ない日々がいつまでも続きますように。




【モバマス】サンタさんと他愛ない日々を END


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